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大垣に行ってきました (+α)【青ブタ聖地巡礼】

前回のエントリ でプレキャンペーンに参加した青ブタコラボ企画 「青春ブタ野郎は大垣の街をまだ知らない」 の本イベントで大垣に行ってきました。

日程は 2月 9日 (金) ~ 10日 (土) の2日間。
距離的には、早朝に家を出ればギリギリ日帰りで行けなくもないんだけど、余裕を持って1泊することにした。

スケジュール的には在来線だけでも全然大丈夫……なんだけど、プレキャンペーンに引き続き本イベント期間中にも(前回とは別の)新幹線乗車特典があるので、一部区間だけ利用。

今回は 京都 - 米原間の乗車で達成

 

JR大垣駅構内ではイベントのポスターや横断幕が掲示。テンションが上がります。

コンコースではポスターを複数掲示

 

北口側の通路には横断幕とフラッグ

 

 

推し旅

今回のイベントは JR東海による各種 IPとのコラボ企画である 「推し旅」 のひとつ。

プレキャンペーンの段階では本イベントの詳細は不明だったが、フタを開けてみればかなり盛り沢山な内容だった。
(もし日帰りで強行していたらイベントをこなすのに精一杯で旅を楽しむ余裕はなかっただろうから、1泊2日にしたのは結果的に正解だったと思う)

 


 

スタンプラリー

スマホに専用のアプリをインストールして参加するデジタルスタンプラリー。参加無料。全7ヶ所をコンプリートすると所定の場所で記念品をもらえる。
「水都」と呼ばれるだけあって、噴水や泉など、どのポイントも水に関連していた。

 

水都の泉

大垣駅の南にある噴水(調整中なのか水は出てなかったけど……)。

 

高屋稲荷神社

境内には澄んだ水が流れる手水場(?)がある。

 

栗屋公園

かなりこぢんまりした公園で、目の前を通ったのに気づかずしばらくウロウロしてしまった…。
綺麗に整備されてて、園内には小川のような水路が流れている。

 

園内に設置されてる掲示板より。普通にためになる

 

名水大手いこ井の泉緑地

郭町商店街の一角にある泉。

 

丸の内公園

大垣市役所西側の川沿いの敷地が公園として整備されている。

 

俵町薬木広場

大垣で活躍した本草学者・ 飯沼慾斎 の胸像が設置されている。

……はい、カンニングしながら書いてるのがバレバレですね…(すみません)

 

むすびの泉

奥の細道むすびの地記念館」の敷地内にある泉。

……なんだけど、この泉に近づいてもアプリが反応しなくてラリーのスタンプが押せない……。困惑しながら辺りをウロウロしてると、記念館の建物付近で反応が……!(参加予定の方は要注意)

 

スタンプをコンプリートすると、上記記念館内の売店で景品がもらえる。

両面にイラストが印刷されたアートボード……「ボード」というか、大きめのカードみたいなもの(A5サイズくらい)。

 

これでスタンプラリーは完了……かと思いきや、何気なくアプリを触ってると……

追加スポット!?
(これ自分はたまたま発見できたけど、7ヶ所コンプで景品もらったあと、気づかず大垣を発ってしまう人も割といそうな気が……。なんかわかりやすい演出があった方がいいと思います)

 

水都北口オアシス

今回のイベントで唯一、大垣駅の北側に存在するスポット。
ここのスタンプを押すと、アプリ内からスマホ用の壁紙がゲットできた。

 


 

ARラリー

指定の6ヶ所に行くと、アプリ内からその場所に対応したキャラのAR写真が撮れる。

 

新大橋

大垣駅通りのほぼ真ん中にある橋。対応キャラはのどか。

 

水の都おおがき舟下り 受付・乗船場

オフシーズンのため目印となるものがなく、「受付・乗船場」というのがどこだかわかりにくかった…。
龍の口橋を渡って川の南側、「大垣高等女学校発祥の地」の石碑があるあたり。対応キャラは花楓。

 

大垣城

駅から順番にラリーを回っていくなら、大垣駅通りを南に歩いていくと右手(西側)に突然現れる(こっちは裏口(?)で、南側の大垣公園から入っていくのが正規ルートっぽいけど)。
対応キャラは麻衣さん。

 

四季の広場

北から南に流れてきた水門川が一旦 東に折れ曲がる地点に整備されている広場。対応キャラは古賀。
撮影ポイントは広場内のどこでもいいのかと思いきや、むしろここは特に判定がシビアでなかなかキャラが出現しなかった……。たぶん電話ボックス付近だと思うんだけど、そこでも出たり出なかったり……。

写真の左右に妙なものが写ってますが…(後述)

 

住吉燈台

江戸時代から大垣の水運を支えていた木造の灯台。対応キャラは双葉。

 

スーパーホテル大垣駅

ビジネスホテル。歴史があったり景観が良かったりする他のスポットと比べると、ここだけ浮いているが……?(後述)
対応キャラは咲太。

 

この ARカメラ、残念ながら操作性とか UXの面でいくつか改善すべき点があるかと思います…。

  • ARキャラを画面内に配置する際の操作性があまり良くない
  • スマホを横持ちにして撮影しても、保存した写真の向きが縦向きのまま
  • 写真の縦横比が妙に細長い(648 x 1411ピクセル
  • アプリ内のカメラ自体の画質が良くない(すごくボヤけてる)
    • (自分の環境だと、保存後のファイルサイズは最大でも130KBくらいだった)
  • 前述の通り、場所によってはキャラの出現スポットがわかりにくかったり、判定が厳しかったりする。もっとゆるゆるでいいと思います…。

 

そして、これがいちばん致命的なんだけど……シャッターボタンを押したあとに写真が保存できない症状が発生する。
「シャッターボタンを押す → 共有するアプリ一覧が出る → 選択して保存」というのが正常な流れだけど、このアプリ一覧が出ない。

左が正常時、右が症状発生時。真っ白……

一旦この症状が発生すると、アプリを終了しても、スマホを再起動しても治らなかった。……かと思いきや、泣く泣くあきらめて次のスポットに向かうと治ってたりする。で、しばらくするとまた発生する……。

おま環なのかと思ったけど、持って来てたサブの端末でも発生するんだよね……。共有アプリを選ぶ形式じゃなくて、単純に「ダウンロードフォルダに保存される」だけの仕様じゃダメだったんだろうか…?

(症状発生時は、シャッターボタンを使わずにスクショを撮ることで一応は保存できる。アプリのUIも一緒に写っちゃうけど……(四季の広場での古賀の写真がそれ))

(余談だけど、キャラが出現しているときにそのイラストを長押しすると……?)

 


 

グルメラリー

指定の10店舗で対象の商品を注文、または購入すると、会計時にアニメの名場面が印刷されたカードがもらえる。「ラリー」という名前だけど、コンプリート特典は存在しない(たぶん)。自分が回ったのは4店。

 

パスタハウス・スズヤ

対象メニューはたらこ生クリームパスタ。(1日目の昼食)

 

中華食房 チャングイ

対象メニューは担々麺。(1日目の夕食)

 

金蝶園総本家(郭町)

対象商品は金蝶園饅頭(5個入)。同封の説明書きの通り、レンジかトースターで温めて食べるとおいしい。

金蝶園総本家(大垣駅前)

対象商品はいちご餅(4ヶ入)。新鮮ないちごを使っててすごくみずみずしい。要冷蔵商品なので、お土産として持ち帰る場合は要注意。

 

古賀、麻衣さんと咲太、双葉(2種)

自分が手に入れたカードはこの4枚。お目当てだった花楓のカードは出なかったよ……。
種類は「購入するたびにランダムで選ばれる」のではなくて「その店でどのカードがもらえるかは固定されている」っぽい(あるお店でもらう時に、同じ絵柄のカードの束が見えてしまった)。

 


 

ポスター等の展示

冒頭で触れた大垣駅の他にも、市内各所で今回のイベントのポスターが掲示されている。自分が見た限りでは、グルメラリー参加店の店頭には確実に掲示されてた。

左上から金蝶園総本家(大垣駅前)、大手いこ井の泉、むすびの地記念館、大垣城、金蝶園総本家(郭町)、パスタハウス・スズヤで撮影

 

また、大垣駅通りにある「大垣市観光情報PRコーナー」のショーウインドウでは等身大POPの展示とアニメの名場面の紹介。(知らない人がこれだけ見てもなんだかわからない気もするけど…)

 

奥の細道むすびの地記念館」の館内では、6人分の等身大POPが一堂に会して展示。

 


 

グッズとか

上記記念館の売店ではイベント限定グッズを販売。自分が買ったのはクリアファイル、アクスタ、アクキー2種。

売り切れになっててもイベント期間中の再入荷があったり、 イベント終了後の通販も予定されてる そうなので焦らないように。

 

また、2000円以上の購入でポストカードがもらえる(1会計につき1枚)。

 

新幹線乗車特典はJR大垣駅構内の西美濃観光案内所で引き換え。
プレキャンペーン特典はクリアファイル、イベント期間中の特典はカードサイズのステッカー(こちらはまだ入手可能)。

 

西美濃観光案内所やグルメラリー参加店で配布されているイベントマップ。広げるとA3サイズくらいでかなり大きい。 公式が作成したほぼ同内容の Google マイマップ もあるけど、やはり紙の地図があると便利。各所を回る前に入手しておくのがオススメ。

 

 

聖地巡礼

そもそもなんで大垣で青ブタのイベントなのかというと、縁もゆかりもないわけではなくて、作品の舞台としてちゃんと登場するからなのだ。

原作小説の第1巻、アニメだとTVシリーズの第2~3話に

「咲太以外の誰からも存在を認識されなくなってしまった麻衣。『どこか遠くの街に行けば、まだ麻衣の姿を見られる人がいるかも知れない』と2人で電車に飛び乗り、在来線を乗り継いでたどり着いたのは大垣だった。駅前のビジネスホテルに宿を取り、近くのコンビニまで替えの下着や食事を買いに行く。そして朝になると駅に直行して藤沢に引き返す」

というエピソードがある。(なので、ラリーで回った名所とかは全然登場しないんですけど……)

今回の聖地巡礼では こちらのエントリ を参考にさせていただきました。

 

原作小説

原作小説で、具体的な場所の特定に繋がりそうな記述は以下の通り。

 

 大垣駅のホームに降り立ったのは、とっくに日付も変わった零時四十分頃。

 (中略)

 なんとなく南口へ出て、バスロータリーの辺りまで歩いたところで立ち止まる。何もない駅だった場合、どうしようかと思っていたが、市の中心地らしく駅ビルや商業施設が並んでいた。これなら今夜の宿くらいどうにかなりそうだ。

 (中略)

 色々と考えはしたものの、咲太は無難なところで駅前のビジネスホテルを頼ることにした。
 部屋が空いているかを尋ねると、フロントのおじさんには怪しい目を向けられた。殆ど手ぶらの高校生が深夜に泊めてほしいと言ってきたのだから当然の反応だ。

 (中略)

 フロントを避けて、裏の出口から咲太は麻衣とホテルを出た。高校生のひとり旅はさすがに目立つ。チェックインの際に向けられた疑惑の視線は減らしておくに越したことはない。

 (中略)

 左右の通りを確認する。駅から離れる方向に約五十メートル。緑色の看板を掲げたコンビニの明かりが見えた。自然とふたりの足がそちらを向く。

 

大垣駅の南側で「駅前」と呼べる範囲にあるビジネスホテルは アパホテルくれたけインスーパーホテルクインテッサホテル の 4軒。しかし「ホテルから見て『駅から離れる方向に約五十メートル』の地点にコンビニがある」という条件を追加すると、どれも当てはまらなくなってしまう。

青春ブタ野郎シリーズは執筆に際してかなり綿密な取材をしていて、固有名詞を出していなくてもその記述内容だけで特定可能なモデルが存在する場合が多い。が、大垣のホテルとコンビニに関しては原作小説の段階では明確なモデルを設定しなかったのかもしれない。
(刊行(2014年)の時点では、記述通りのホテルとコンビニが存在した……という可能性もなくはないが…)

 

コミカライズ版

TVアニメに先駆けて2015年から連載が始まったコミカライズ版。大垣でのエピソードが描かれたのは全20話の終盤にあたる第16・17話(2017年11月発売号・2018年3月発売号に掲載)。
こちらでは実際の街と同様の風景が描かれており、ホテルとコンビニも実在の店舗をモデルにしている。

JR大垣駅現在の駅ビルの名称は「アスティ」だが、2018年 8月までは「アピオ」だった

 

西美濃観光案内所。リニューアルされたっぽい… (以前の姿はこちら)

 

スーパーホテル(漫画だと「スーパービジネスホテル」)。大垣駅からは徒歩5分くらい

 

スーパーホテル付近の街並み

 

コンビニへと向かう道中。ホテルから道を渡ってすぐの駐輪場

 

十六銀行(漫画だと「六十六銀行」)

 

左側に見えるのは「スイトテラス」という再開発ビル……らしい

 

ローソン S大垣駅南口店。 最初、漫画と見比べて「モデルはここではない…?」と思ったけど、これ写真を左右反転させて使ってますね(奥にあるOKB(大垣共立銀行)の看板に注目)

いま気づいたけど、スーパーホテルからローソンまでだと、道を渡ってから駐輪場の中を突っ切って行くのが最短ルートかもしれない……(「絵的にどうなんだ」というのは置いといて)

 

アニメ版

2018年 10月放送開始のTVアニメでも、コミカライズ版を踏襲して宿泊先のモデルはスーパーホテルっぽい(AR撮影のスポットに選ばれたのはそのせい)。
が、コンビニへ向かうルートが変わっていたりと相違点も多い。

駅名標。JRのロゴと駅番号の表記が省略されている

 

改札口

 

ホテル。外観はこのワンカットしか登場しないので「本当にスーパーホテルがモデル…? 微妙じゃね?」と思わなくもないが、「原作小説」の項で挙げたほかの3軒の外観は明らかに違うので…

 

内装

アニメだと内装は「一昔前の典型的なビジネスホテル」という風情だけど、実際はかなり綺麗だった。……はい、ここに泊まりました。

劇中だと咲太が客室から友人に電話をかけるシーンがあるけど、スーパーホテルの客室には電話機自体が存在しない。また「備え付けの時計が数分遅れていた」というくだりもあるが、もちろんそんなことはなくてキッチリ正確だった。

 

アニメ版のコンビニの外観、なんだけど……

コミカライズ版のローソンとは明らかに違う。店名やデザインの元ネタは セーブオン っぽいけど、岐阜県に店舗が存在したことはなさそう(たぶん)。チェーンにこだわらず探しても、ホテル近辺に類似する外観のコンビニは(少なくとも現在は)存在していないようなので、特にモデルはないのかもしれない。

 

コンビニからの帰路。参考にさせていただいたエントリにある通り、場所のモデルは新大橋より北側のアーケードのようだけど、店舗は架空っぽい…?

 

同シーンの別カット。……指が写り込んでる…。(痛恨のミス)

 

JR大垣駅。水都タワー越しのアングル

 

大垣駅前、商店街の入口にあたる場所。左に見えるのは金蝶園総本家

 

(おまけ)今回のイベントのキービジュアル。 「OKB street」というのは郭町商店街の愛称

 

 

ふつうの大垣観光

大垣駅からスタンプラリーとARラリーを並行して進めていくと、何度も橋を渡ったり川沿いを歩いたりすることになる。地図を見ると、大阪の市街地のように何本もの川が縦横に流れているのではなく、「水門川」という1本の川に沿うようにポイントが設定されていることに気づく。水は澄んでいて、川底に生える水草が流れにゆらめく様子を見ることができる。

 

大垣城の外堀として作られたというこの川には石造り、鉄製、木造(風?)、朱塗りとバリエーション豊かないくつもの橋がかかり、川沿いを散策していて飽きることがない。

左上から外側橋、東外側橋、高岡橋、龍の口橋、美登鯉橋、虹の橋、京橋、貝殻橋、住吉橋

 

ただ、川下りができなかったのはちょっと残念だったな~、まあオフシーズンのイベントだから仕方がないけど……とか思ってたら、 イベント最終盤(3月下旬)にそれも追加された。 抜かりない……。

 


 

大垣は松尾芭蕉の「奥の細道」の終着点(むすびの地)ということで、前述の記念館や銅像が建てられている。

空也上人ではない

 


 

市内を歩いている時にふと西の方を見ると、はるか遠くにある雪山が目に飛び込んできた。検索してみると、どうやら岐阜と滋賀の県境にある 伊吹山 っぽい。積雪どころか降雪もめったにない地域に住んでいて、雪山を見る機会なんてないのでちょっと感動してしまった。*1

 


 

青ブタ以外にも大垣を舞台にしたアニメや漫画はいくつかあるようで、市内の各所で作品が紹介されていた。大垣市はこういうコンテンツを観光や街づくりに活用することに関して、自治体レベルで積極的な姿勢を感じた。正直うらやましい……。

 

大垣市観光情報PRコーナーのショーウインドウでは 聲の形自転車屋さんの高橋くん

 

奥の細道むすびの地記念館」の入り口には聲の形(原作版)と大垣市オリジナルアニメ 「おあむ物語」 のPOP……オリジナルアニメ!?

「おあむ物語」の他にもいくつか大垣市プロデュースのアニメが作られているらしい。 すごい……。

 

記念館の館内では、聲の形の舞台のモデルになった場所が紹介されていた。「大垣のご当地作品」としては青ブタの比ではないくらい濃度が高い…。どこが舞台かなんて映画公開当時は気にしなかったけど、言われてみればここまで歩いてくる時に見たのと似た風景をアニメでも見たような気もする。聲の形が公開されたのも、もう8年前…………
え? フェルン、それは流石に嘘だよ。聲の形が公開されたのはせいぜい4~5年前だよ……。

 

JR大垣駅北口には聲の形のコラボイラスト(?)

 


 

ちょっとびっくりしたのは、駅前から続く商店街の外れにある交差点。

 

横断歩道を渡ろうと思ったら……

えっ、「自転車専用」??

 

じゃあ、どうやって渡れば……ん?

あ、この地下道を通るのか! そういえば同じような入り口が駅前の交差点にもあった気がする……(けどそちらは歩行者も普通に横断歩道を使えた)。

 

図で示されてる通り、地下でX字状に交差してるので、油断してると自分がどちらの方に進んでいるのか見失いやすい(2回通って2回とも迷った奴)。

 

この地下道にもイベントのポスターが掲示されていました

 

 

まとめ

大垣って、青春18きっぷで東京に行く時の乗換で降りたことはあったけど、改札の外に出たことはなかった。

それどころか、関西からだと「帯に短し……」みたいな距離なのもあって、大垣のみならず中部地方をちゃんと旅したことって今までなかったかもしれない(愛知県美術館に行ったことがあるくらいか…?)。

(一応)青ブタの聖地なのでいつかは行きたいと思ってたけど、優先順位は高くなかったのでかなり先になってたかもしれないし、実際に来ても劇中に登場した駅前のごく限られたエリアだけを回って終わりだった気がする。

今回こういうイベントがあって実際に来てみると「今までに来たことがなかったのが勿体なかった」と思うくらい いい街だった。

 

 

+α

2日目の昼過ぎに大垣を出発。そのまま帰宅はせず、大阪の天王寺へ。
なぜかというと、ここで 開催中の 開催されていた青ブタのコラボカフェ……え、カフェじゃない? 串かつ??
記事のアップが遅すぎて終了してしまった……(2月いっぱいの開催だった)

 

串かつ でんがな あべのルシアス店

 

串かつ でんがなの全国6店舗で開催されていたコラボイベント。 麻衣・のどか・花楓の描き下ろしイラストでの装飾、コラボメニュー注文でコースターなどの配布、コラボグッズの販売などが行われていた。

 

花楓のアップルティー。コースターをゲット

 

串かつ6本セット。これを注文するとランダムでクリアファイルがもらえるんだけど……お目当ての花楓の柄じゃなかったよ…。

 

ほかに頼んだのは(コラボメニューではない)フライドポテト。もうちょっと食べたい気持ちはあったけど、胃袋と(あとサイフと)相談して自重しました。

 

コラボメニューを注文すると、会計時にグッズの購入もできた。イベントは終了したけど、 このグッズの事後通販は受付中です(3月17日まで)。
ただ、ランダム配布だったコースターやクリアファイルは販売対象じゃないけど…。

 

*1:六甲山が冠雪することはあるかもしれないけど、普段そういう意識で見てないので…

1駅分だけ新幹線に乗る

 

JR東海が企画する大垣での青ブタのイベントが来年2月から開催予定で、そのプレキャンペーンが実施中である(12/24まで)。その内容はというと…

 

  • 期間中に東海道新幹線の車内で専用サイトにアクセスすると、スマホ用の壁紙、および後日 大垣での本イベントでクリアファイルに引き換えられるシリアルコードをゲットできる
  • 対象区間は東京駅~新大阪駅
  • スマホのセンサーで位置情報を検出・速度を測定して、一定速度に達すると「乗車中」だと判定される

 

「新幹線の乗車が必須とかなんつーイベントだよ……」と思ったが、アニメのイベントなんて大半は東京での開催だし(青ブタだと聖地である藤沢も割とあるけど)、青ブタに関しては現在 全国6ヶ所(長野・鹿児島・福岡・山梨・香川・静岡)のサービスエリアとのコラボイベント *1 という更にぶっ飛んだやつが開催中だったりもするので、「自分の居住地から(時間的・経済的に)無理せず日帰りで参加できるのはむしろラッキーなのかも……?」と考え直して、参加してみることにした。

 

で、検討した結果、いちばん安価&手っ取り早いのが「在来線で新大阪まで行き、そこから京都まで1駅分だけ新幹線に乗る」(帰りは京都から在来線で)というプランだった。
(個人的にはもうちょっと西の駅まで対象にしてくれたらありがたかったんだけど…。まあJR東海の企画だししゃーない)

 

ただ、ひとつ不安だったのは「新大阪~京都の1駅分、距離にして40~50kmほど、乗車時間にして13~14分程度で、今回のイベントの乗車判定をクリアする『一定速度』に達するのか…?」という点。こればっかりは実際に乗って試してみるしかない……。

 

新大阪駅

決行したのは昨日 12/9 (土)。
映画を観に来ていた三宮から在来線で新大阪に向かう。

 

14:20 到着

 

14:23 駅ナカ

 

14:24 新幹線改札前に到着

 

14:25〜27 スマートEXアプリで自由席を予約

 

14:31 今からだと……14:39発ののぞみか?

 

14:33 27番ホーム

 

14:34 もう来てた(実はさっきの写真の時点で既に)。自由席は1~3号車


新幹線車内

14:35 乗車。ドキドキ……

 

14:39 発車! サイトにアクセスする…

 

14:39 測定開始

 

14:39 速度に応じてメーターの針が動く演出が

 

14:42 はやく……はやく……(焦)

 

14:42 !!!(針の角度が90度くらいになると自動的にこの画面に切り替わった)

 

14:42 あ、アンケート…!?(焦ってたのですごいテキトーに回答してしまった…)

 

14:43 壁紙ゲット!

 

14:43 今度はシリアルコードの方……

 

14:43 ……だけど今回は一瞬で終わった。乗車確認の時刻表示を見ると、前回の測定結果でパスしてるのかもしれない

 

14:51 無事ミッション達成できてホッとした……。写真は東寺の五重塔……でいいのか?

 

14:52 そろそろ降ります

 

京都駅

14:55 降りました

 

14:54 時系列が前後したけど有名なアレ(未購入)

 

14:58 駅構内。15:00発の新快速に乗りたいので焦っている…(ので在来線ホームでの写真はなし)

 

まとめ

  • 心配してた「一定速度」には発車後 3分程度で到達。京都駅に到着するまで 13分くらいだったから、振り返ってみれば全然焦る必要はなかった。こんなことならアンケート、ちゃんと回答すればよかったな~……。
  • ただ、サイトで明言されてる東京~新横浜間(というかその間に品川もあるけど)とか『一定速度に達しない場合など、一部ダウンロードができない区間』もあるそうなので、これから参加しようと思ってる人は注意してください!
    • 駅間の距離を見てみると、熱海~三島間(乗車時間 7分)とか、三島~新富士間(8~9分)とかも微妙かもしれない……??
    • あと、通信が不安定だと測定できない可能性もあるそうなので、乗車したらまず Shinkansen_Free_Wi-Fi に接続しておいた方がいいかもしれない。
      自分は普通に使えたけど、ブコメによるとあんまり評判が良くないみたいなのでやめた方がいいかもしれない……?
  • さて、次は大垣。青ブタにちょっとだけ登場する場所なのでいずれ行きたいとは思ってたけど、2月か3月に行くことが決定してしまったぜ……。
  • (12/13 追記) ブコメで知ったけど、「推し旅」の新幹線車内限定コンテンツ、青ブタ以外の作品とのコラボでも実施されてたのか。JRでないとできない企画だなー…。

 

 

*1:登場人物たちの苗字がサービスエリアの名前から取られているので

【青ブタ】ランドセルガールを観ました

12月1日に公開された劇場用アニメ『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』を観た。現時点で2回鑑賞(12/1 と 12/2)。

 

原作小説は何ヶ月も前に購入してるけど、敢えて読んでなかった。近々読み始めると思うけど、読んでしまうと(これまでの青ブタシリーズでそうだったように)アニメの方の印象も変わってしまう気がするので、現時点での感想を書き留めておく。

 

※以下、ネタバレを含みます(クリックで展開)

 

 

あらすじ的なもの

(記憶を頼りに書いてるので間違いがあるかもしれない…。気づいたらその都度修正します)

 

3月。主人公・梓川あずさがわ咲太さくたの妹、花楓(かえで)の記憶が回復して数ヶ月。心配されていた彼女の進路も決まり、咲太は久々に穏やかな日々を過ごしていた。

 

そんなある日、父から連絡が入る。

「母さんが『花楓に会いたい』と言っている」

2年前、いじめをきっかけに不登校に、そして記憶を失って解離性同一性障害になってしまった花楓を受け容れきれず、自らも心を病んで入院してしまった母。父はそんな妻を看病するために子供たちとは別居し、咲太と花楓は2人で暮らしていた。

 

数日後、咲太と花楓は電車に乗って父が暮らす社宅に向かった。緊張しつつ家に上がり、母に歩み寄る花楓。二人はお互いに涙を流し、2年ぶりの再開を果たす。

その日は家族4人で団欒の時を過ごし、夜には食卓を囲んだ。母は「今日は泊まっていけばいいじゃない」と言うが、翌日も学校がある咲太は、花楓を残し一人で帰宅する。

 

翌朝。いつものように登校した咲太が、自らの身に起きている異常に気付くのに時間はかからなかった。

教師にもクラスメイトにも咲太の声が聞こえず、姿も見えていない。それどころか、最初からそんな人間はこのクラスに存在していなかったかのように振る舞っている。学校中の教室のドアを片っ端から開けて回ったが、誰一人として咲太の存在に気付くものはいない。

……咲太は、かつてこれと同じ状況を経験していた。それは1年近く前、恋人である桜島麻衣の身に起きた「思春期症候群」に酷似していた。

 

昨日までと今日とでなにか変わったことと言えば……そうだ、母に会いに行ったことだ。咲太は学校を抜け出し、再び母のもとへ向かう。

父の社宅まであと少し……というところで、ちょうど買い物に出かける母と花楓に出会った。……が、2人はやはり咲太の存在に気づかない。談笑しながら、咲太のすぐ横を通り過ぎてしまった。

 

途方に暮れ、夜の七里ヶ浜海岸に立ち尽くす咲太。するとそこに、ランドセルを背負った、幼い頃の桜島麻衣によく似た少女が現れる。

「おじさん、迷子?」

咲太はなすがままに、少女に手を引かれて、目的地もわからぬまま電車に乗り込んだ。そして……。

 

「お兄ちゃん、朝だよ!」

花楓の声で目が覚める。咲太はいつの間にか自宅のベッドの上にいた。……が、なにか違和感がある。キッチンへ向かうと母が作った朝食がテーブルの上に並び、父も座っていた。

そこは、咲太が起こした行動によって花楓のいじめ問題が解決し、花楓は不登校にも解離性同一性障害にもならず、そして母も心を病むことはなく、親子が離れて暮らすこともなかった「もうひとつの可能性の世界」だった。

 

 

感想

なんていうか……いろいろ釈然としない……。

 

なぜ咲太がこんな目に遭わなくてはならないのか

これまでの青ブタシリーズは「各章のヒロインに起こった思春期症候群(『思春期特有の不安定な心が引き起こす不可解な現象』を指す、青ブタ独自の用語)に巻き込まれた咲太が、それを解決するために奔走する」という流れがお決まりであった(例外となるエピソードも割とあるが…)。

今作ではそれまでと違い、咲太自身の身に思春期症候群が降りかかる*1

咲太は「母に会いに行った日、半日も一緒に過ごしたのに一度も目が合わなかった、一度も直接言葉を交わさなかった、一度も名前を呼んでもらえなかった。なのに、その違和感にすぐには気付かなかった」こと、そして「この2年の間、母のことを忘れていた、考えないようにしていた」ことが原因なのだと考えた。

 

もし本当に、そのことを思春期症候群を引き起こすほど気に病んだのだとしたら、あまりにも自罰的すぎるよ、咲太……。だって……しょうがなかったじゃん……。咲太はこの2年の間、『かえで』と向き合ってあげなくちゃならなかったんだから……。

 

2年前、家族や友人についての一切の記憶をなくしてしまった『花楓』の身体に生まれた新たな人格、『かえで』。性格も、口調も、利き手さえ変わってしまった娘に両親は戸惑い、「ゆっくりでいいから良くなってくれ」と言葉をかける。もし我が子の身に同じ事が起きたら、『花楓』の両親でなくとも同じように戸惑い、似たような言葉をかけるかもしれない。だが、それは『かえで』にとっては「今のお前は『良くない』」「『元のお前』に戻ってくれ」という、拒絶の言葉にほかならなかった。

 

咲太も当初は両親と同じように戸惑い、別人のようになってしまった妹とどう接すればいいのか悩んだ。しかし、それまでの『花楓』としてではなく、いま目の前にいる『かえで』をひとりの人格だと認めて、彼女の「お兄ちゃん」になろうと決めた。こうして咲太は『かえで』にとって世界でただ一人の理解者になり、『かえで』にとって「咲太の妹であること」が自らの存在理由となった。

 

一方、会社員の父や中学生の咲太とは違い、専業主婦である母は日中も家にいて、一日の時間の大半を不登校『かえで』と過ごした。その結果、精神的に疲弊してしまい、ついには心を病んで入院することになってしまう。妻に付き添うため、父は子供たちとは別居することになった。こうして咲太と『かえで』、二人で暮らす新しい生活が始まった。

 

生まれ育った横浜から、進学した咲太の高校に近い藤沢の街に引っ越した二人。咲太は、不慣れながらも炊事、洗濯、掃除、買い物、その他一切の家事をこなし、家計を助けるためにバイトを始め、もちろん毎日学校にも通った。家から外に出られない『かえで』のために彼女の服、下着、さらには(店員に白い目で見られながらも)生理用品まで買いに行った。読書好きの『かえで』のために図書館まで本を借りに行き、髪が伸びてくれば拙いながらも切り揃えてやった。

 

……こんな毎日を過ごす中で「母の存在を忘れていた、考えないようにしていた」からって、一体誰が責めるっていうんだよ……。『かえで』と二人で過ごす毎日の中で、『かえで』を拒絶した母親のことも考えなければならなかったというのか……?

 

もしこの2年の間、一度も母親の見舞いに……会いに行かなかったのだとしたら、確かにそれは薄情だったかもしれない。

……でも、会いに行って、咲太はどうすればいいんだ? 『花楓』もきっと、そのうち良くなるよ」……みたいな、「お兄ちゃん」である自分を頼って、彼女なりに毎日を必死に生きている『かえで』を裏切るような言葉をかけなければいけないのか……?

(もちろん咲太だって、『花楓』に帰ってきてほしくないわけではなかった。『花楓』『かえで』、彼にとってはどちらも大切な妹だ。記憶が戻り、『花楓』が帰ってくれば、恐らく『かえで』は消えてしまう……。咲太にとっては、そんなジレンマに苛まれた2年間でもあった)

 

それに、そもそも「2年の間、母親のことを考えないようにしていた」というのも事実とは違う。原作小説1巻(バニーガール先輩)にはこう書かれている。

 

「お母さんのこと、恨んでない?」
「そりゃ、恨みましたよ」
 さらっと咲太は本音で答えた。
「親なんだから助けてくれて当たり前だろって思ったし、僕やかえでのことを信じてくれよって思いました」
 けれど、離れて暮らすようになってわかったこともある。たとえば、母親は毎日家で、家族の食事を作って、洗濯をして、風呂やトイレを掃除して、色々な面倒を一手に引き受けてくれていたのだ。それを当たり前のことだと、一緒に暮らしていた頃の咲太は思っていた。
  全部自分でやらなければならなくなって、気づいたことはある。変わったことはある。些細なところで言えば、トイレは座ってするようになった。
 たぶん、母親だって色々と我慢していたことがあったんだと思う。家族に気づいてほしいことだってあったんだと思う。だけど、咲太の前では一言も口に出さなかった。顔にだって出さなかった。「ありがとう」のひとつも要求してこなかった。
  そうした日々の感謝を返せなかったことを考えれば、恨むのも筋違いな気がする。この一年で、咲太はそう思えるようになった。

 

こういう感謝の言葉とか、「元気になってよかった」みたいな言葉を、母に会いに行った日に直接伝えるべきだった……と言えば、そうかもしれないけどさ……。

 

あと、「目が合わなかった」とか「名前を呼んでもらえなかった」って、咲太じゃなくて母親の方の行動じゃん……。なんで咲太が自分を責めなくちゃいけないんだよ……。梓川家みたいなすごく複雑な事情がなくても、たとえ家族でも長い間 顔を合わせてなければ多少のぎこちなさがあってもおかしくないし、再び一緒に暮らすようになれば、それは少しずつ解消されてゆくものだよ……。

 

思春期症候群について

今作で咲太が体験した思春期症候群は2つ。

 

  1. 他の人間から姿が見えず、声も聞こえなくなり、自分の存在がまるで世界から消失したようになってしまう。
  2. 「ランドセルガール」に連れられて「もうひとつの可能性の世界」に行き、そして帰ってきた。

 

ひとつ目の方は、「あらすじ的なもの」でも書いたとおり、桜島麻衣がかつて経験したものに酷似している。朝ドラに主演した子役時代から国民的な知名度を誇る女優でもある彼女は「誰も自分のことを知らない世界に行きたい」と願い、それが形を変えて実現してしまった。また、麻衣の妹・豊浜のどかの場合は優秀な姉に憧れ、それが転じてコンプレックスになり、「姉妹の姿が入れ替わってしまう」という思春期症候群が発症した。

このように、これまでの青ブタシリーズでは「それぞれが抱える悩み」「思春期症候群が引き起こす現象」に関連性が見られた。だが、母親との関係に悩んでいた咲太が体験した思春期症候群が麻衣のものとほぼ同じだったというのは、これまでの不文律から逸脱している。咲太は「母親とどう接すればいいか」ということに悩んでいたのだから、「すべての人間から」ではなく、母親、あるいは家族(両親と花楓)からは認識されなくなる……だったらまだ納得できたかもしれない。

 

ふたつ目の方については、そもそも「ランドセルガール」は何者なのか? なぜ子役時代の麻衣と同じ姿をした少女が咲太の前に現れ、「もうひとつの可能性の世界」へといざなったのか? 彼女は咲太の思春期症候群ではなく、なにか別の要因によって現れたのではないのか? ……などなど、ひとつ目の方以上に謎が多い(今後のシリーズで明らかにされるのだろうか…?)。

 

その他いろいろ

  • 「もうひとつの可能性の世界」で咲太が教室に入ったときのカットで、上里が露骨にイヤそうな顔でこっちを睨んでてワロタ
  • 咲太の家のDVDプレーヤーのリモコン、なんかすごく見覚えがあるけど、もしかして……と思い2回目の鑑賞で注意して見たら、やっぱりPS3のリモコンだった(旧型新型かまでは確認し損ねた テンキーが丸ボタンだったので新型っぽい)。スマホも持ってないし、部活もしてないし、趣味らしい趣味もなさそうだし、浮世離れし過ぎなのでは……と少し心配してたのだが、息抜きにゲームで遊んだりはしてるのかも…?と思うと少し安心した。思えばTVシリーズの回想シーンではPS1で遊んでたし、今作の「もうひとつの可能性の世界」の自室にもPS1はあったし、人並みにゲームは好きだったのかもしれない。
  • エンドロールの「絵コンテ」欄に、増井壮一監督と並んで「片瀬山」という名前があったが、誰かの変名なのだろうか? 青ブタの舞台である藤沢市同名の地名があったり、隣接する鎌倉市同名の湘南モノレールの駅があったりするけど……?
  • 同じくエンドロールの「協力」欄にあった「有限会社マーロウ」。なにかと思ったら、咲太と花楓がおみやげに買って行ったプリンのメーカーなのか。次に藤沢に行くことがあったら買ってこよう(いつになるやら…)。

 

 

追記(2023/12/09 (土))

3回目を観に行った。2回目から1週間あけて、その間にいろいろ考えたりそれをブログにまとめたりしたせいもあってか、わりと自分の中で消化できた気がする。

 

今回の思春期症候群は上で書いた2つ(あと、その前兆のように咲太のへそ付近に新たに出現した傷跡)だけなのかと思ってたが、「両親と離れて暮らすうちに、咲太は次第に母のことを考えなくなる → その咲太の内心にシンクロして、母も咲太のことを考えなくなり、母の中から咲太の存在が消えてしまうというものも起こっていた……ってことなのかな。つまり今作「ランドセルガール」の物語が始まるずっと前から、既に思春期症候群は始まっていた、と。

だから母が父に伝えた言葉は(「花楓と咲太に会いたい」ではなく)「花楓に会いたい」だったし、再会の日に咲太と目が合わなかった、咲太の名前を呼ばなかったのも、思春期症候群によって、既にこの時点で咲太の存在を認識できなくなっていたから……。

のどかの思春期症候群のように「発症した本人だけではなく、強いつながりを持つ人物にも影響を与えてしまう」という例はあったし、この症状はまだ納得できる。……ただ、「母親から認識されなくなる」「この世界の誰からも認識されなくなる」に悪化してしまったのは、やはり釈然としないが……。

 

「咲太のことを認識できなくなったのは、『咲太の思春期症候群』ではなく『母親の思春期症候群』なのではないか…?」とも考えたが、本作のラストシーンで、咲太が母親の前で感謝の言葉を述べることで症状が解消されたことを考えると、やはりこれは『咲太の思春期症候群』なのだろう。
(あと、名前が『思春期症候群』だし……。明確に定義された言葉ではないから、この名前がミスリードであるという可能性もないことはないが……)

 

 

*1:咲太の胸に突如 原因不明の大きな傷ができる……ということはあったが、これは牧之原翔子の思春期症候群に付随して起きた事象だった

藤沢(とか)に行ってきました【青ブタ聖地巡礼】

 

聖地巡礼」って、自分には縁がないと思ってた。

そういう話題を目にしても「ふーん、世間には熱心なファンがいるんだな~」と完全に他人事だったし、そんなお金や時間があるなら本とかCDとか形が残るものに使った方が……というタイプだった。

でも「おでかけシスター」から青ブタにハマってアニメを何周もしてるうちに、漠然と「藤沢に行ってみたいな…」と思うようになり、ストリートビューを見たり、物語の舞台になった場所を調べてリストアップしたりしていた。

「でも、行けるとしても当分 先の話かな……休みも取れないし……

 

……と思ってたら、突然 長期の休みが取れることになった!!!(※辞めたとかクビになったとかではない)

このチャンスを逃したら次はいつ行けるか分からない……!と、急いで準備をして旅立ったのであった。

 

  • 日程は 9月 7日(木) ~ 11日(月)。
    「○日目はあそことあそこに行って…」と事前にある程度の予定は立てつつ、進捗を見ながら現地で適当に変更できるように……ということで、余裕を持って 4泊5日にした。
  • 既存の聖地巡礼ブログとかまとめサイトとかは極力見ないようにした(参考にさせていただいた いくつかのサイトやツイートは脚注にリンクを貼っています)

 


1日目

 

JR藤沢駅

早朝に家を出て午前中に着いた。アニメで見たのと同じ景色だ……と頭では分かっているが、どこか現実感がない。奇妙な感覚……(旅行自体がかなり久しぶりだからテンションがおかしいのかもしれない)。

出発前は「アニメと同じアングルで写真撮影」みたいのは やんなくていいかな~と思ってたけど、現地に行くとやりたくなるもんですね……。

駅舎外観(北口側)

あんまりたくさん貼ると重くなっちゃうんで、以降 画像は一部を除いて緑リンクで飛んだ先にあります。
(あと、同じ場所に複数回行ってたりするんで撮影日時はバラバラです)

 

藤沢駅周辺

 

柳通りの交差点

柳通りと遊行通りの交差点。TVシリーズでも何回か登場したけど、「おでかけシスター」の終盤で咲太が鹿野さんを駅まで見送りに行くシーンの印象が強い。

 

この交差点から遊行通りを北に少し歩くと……

本屋の前にのどかと卯月がいた!!
大興奮。こんな街なかに普通に青ブタののぼりが立ってるなんて……!

この時は写真撮っただけだけど、せっかくなので後ほど再訪して青ブタの原作小説を買いました(全巻持ってるけど)。昔ながらの「町の本屋さん」という感じだけど各種電子マネーは使えた。

ジュンク堂と違ってこの本屋さん(文華堂)は青ブタに登場しないけど、通学路のすぐ近くだし、咲太や麻衣さんが訪れててもおかしくないよな……(妄想)

 

蔵まえギャラリー

TVシリーズ 第4話で咲太と古賀がバイトの帰りに歩きながら話してたシーンに登場。

 

御所ヶ谷橋

咲太や麻衣さんの通学路にあたるので何回も登場する橋。
「ごしょがだに」かと思ってたら「ごしょがや」だった…。(そういえば西日本は「たに」で東日本は「や」なんだっけか)

 

御所ヶ谷公園

咲太と古賀が尻を蹴り合った公園。ジャングルジム(?)の形とカラーリングが特徴的。ここも何度も登場する。

 

藤が丘団地周辺

咲太や麻衣さんの自宅マンションがある(と思われる)団地。
本当にごく普通の住宅街なので、ご迷惑にならないように…。

 

藤沢市民病院

熱中症で倒れた咲太が運ばれたり、同じく倒れたかえでが運ばれたり、記憶が戻った花楓が入院したり、牧之原さんが長期入院してたり……と青ブタではおなじみの病院(アニメでは「藤沢総合市民病院」)。

 

デニーズ 藤沢北口店

咲太のバイト先のファミレス(アニメでは「Benny's」)。

三大「関西人が『名前は聞いたことあるけど行ったことはない』外食チェーン」、……それはジョナサン日高屋、そしてデニーズ *2※諸説あります

 

「おでかけシスター」で花楓が食べてたオムライス……!

6月に「おでかけシスター」を観て感動して、漠然と「いつかは藤沢に行きたい、そして藤沢のデニーズでオムライスを食べたい」と思い始めた。……のだが、調べてみると今年の3月から(卵の供給不足の影響からか)オムライスの販売は休止していた。

まあ実際に行けるのはいつになるかわかんないし、その時に復活してればいいか……と思っていたら、突然の長期休暇。そして、デニーズのオムライス復活というニュースまで! でもオムライスは 8/29~9/11の期間限定……!? ということで、出発を急いだ理由のひとつがこのオムライスなのであった。

……が、期間終了後も普通に販売されている……。どうやら「期間限定」なのは「お得な特別セット」で、その後はオムライス単品での販売に切り替える、ということだった模様。

 

ダイエー 藤沢店

TVシリーズ 第2話 冒頭で咲太と麻衣さんが買い物をしていたスーパー。
アニメには店の外観は出てこないが、コミカライズ版で描かれた外観とレジ袋のデザイン、それに原作小説での『十一時まで営業している』という記述から恐らくここだと思われる。

 

ビックカメラ 藤沢店

 

ジュンク堂書店 藤沢店

上記 第7話で店内が登場。そして「おでかけシスター」では花楓の部屋にある本にブックカバーがかかっていた。
そういう縁もあってか、漫画・ラノベ売り場の棚の側面で青ブタミニコーナーが展開されてた。
ここでも青ブタの原作小説を買いました。

 

江ノ電 藤沢駅

咲太が通学で毎日使ってる駅なのでここも何度も登場するけど、「おでかけシスター」で入試に向かう花楓と、それを見送りに来た咲太が別れるシーンが印象深い…。

 


2日目

 

関東地方に台風13号が接近して、前夜から強風と大雨……。行きたいところの大半が屋外なので、これは困った。
仕方がないので事前に立ててた予定を変更。雨風が弱まることを期待して出発を昼以降にずらし、行く場所も天候の影響を受けない場所だけにした(幸い、傘をささなくてもいいくらいには弱い雨になった)。

 

藤沢市総合市民図書館

小田急 湘南台駅から徒歩15分くらい。TVシリーズ 第1話 冒頭の舞台なので印象は強いが、意外にもそれ以降は登場しない。

「館内の撮影には許可が必要」ということは事前に調べて知っていた*3のだが、「館内の利用者が写り込まないように撮影しないといけない」とのこと。 撮りたい場所やアングルが決まってる場合は、時間帯とか曜日とか、利用者が少ないタイミングを狙わないと難しそうだ…。

しかも撮影の際は職員の方が1人横について、1枚撮るたびにチェックを受ける。……む、無理じゃ……。コミュ障陰キャには無理じゃ……。……ということで3枚撮った時点でギブアップ。
(職員の皆さんは慣れた様子で、嫌な顔をしたりせずに対応してくださいました。念のため…)

撮影した3枚のうちの1枚

 

小田原コロナシネマワールド

JR国府津駅から徒歩30分。小田原市にある複合娯楽施設内の映画館。
ここは青ブタには直接関係ないんだけど……

はい

地元で通ってた劇場が終映になっちゃったので……。これで12回目の鑑賞。

 


3日目

 

小田急 新宿駅~葵通り~ニューステイトメナー

「おでかけシスター」で咲太と友部さんが通信制高校の説明会に行くために通ったルート。前夜に劇場で観たのがいい予習になった*4

 

上野動物園

パンダが好きなかえでのために咲太が連れてきた動物園(アニメでは「東京動物園」)。
来るのは初めてではないけど、20年以上ぶりとかかもしれない……。上野駅の構内がすごくきれいになってて驚いた。

正門入ってすぐのところ。パンダ舎は東園から西園に移転してるけど、幸い旧パンダ舎の建物はまだ残ってた

園内をぐるっと周ってだいたいの動物は見られた。クマ、カワウソ、トラ、ハシビロコウ、サイ、コビトカバ……etc。
……けど、ぶっちゃけそれ以上に不忍池の一面のハスの葉に圧倒されてしまった。

 

横浜市立大学附属病院

記憶を失ってしまった花楓……かえでが入院していた病院(アニメでは「横浜大学院総合病院」)。

 

JR茅ヶ崎駅

「ゆめみる少女」で花楓の髪を切るために美容院に行った帰りのシーン。

 


4日目

 

テラスモール湘南

JR辻堂駅直結のショッピングモール。「おでかけシスター」でスイートバレットのライブが行われた屋外ステージがあるところ。
「アニメとおんなじだ…!」という感動を、現地でいちばん実感できたのがなぜかここだった。

スイートバレットの歌声が聴こえる……(幻聴)

 

江ノ電 鎌倉高校前駅

TVシリーズ 第9話・第10話でCM撮影が行われた駅、なんだけど…。

人が…人が多い…! ここに来るまでの藤沢駅江ノ電の車内の時点で既に多かったんだけど、曜日の選択を間違えたかしれない……(この日は日曜日)。
国道134号側から駅のホームを撮りたかったけど、断念。改札を出ず、そのまま次の目的地に向かうことにした。

 

江ノ電 七里ヶ浜駅

咲太たちが通う峰ヶ原高校……のモデルになった七里ガ浜高校の最寄り駅。

 

七里ヶ浜駅周辺

町内会館の前にも花楓がいました

 

七里ヶ浜海岸

高校からすぐの海岸。青ブタでは「登場人物たちがそれぞれの心情を吐露する場所」という印象がある。

9月になったとは言えまだまだ残暑は厳しく、また曜日のせいもあってかここも賑わっていた。

砂が……黒い……(アニメだともっと白いイメージがあった)

 

川崎チネチッタ

川崎駅近くのショッピングモール内にある映画館。

『ふつうの軽音部』で、はとちゃんがバンドの名前にした「ラチッタデッラ」ってここのことか~

例によって青ブタと直接関係ある場所ではないけど……。

13回目や

 


5日目

 

2日目の台風で遅れた予定を取り戻そうと頑張ったせいか、4日目までで予定を全部消化してしまい、最終日がまるまる空いてしまった……。
急遽、「時間的に難しいかな~」と出発前に予定から外していた江の島方面に行くことに。

 

小田急 本鵠沼駅

TVシリーズ 第8話で双葉の家の最寄り駅として登場。

 

小田急 鵠沼海岸駅

同じく第8話、花火大会を見るためにここで待ち合わせた。

 

小田急 片瀬江ノ島駅

江の島や新江ノ島水族館の最寄り駅。

……あれ??

駅舎のデザインがアニメと全然違う……?
その場でググってみると、2019~2020年に工事をしてリニューアルされたらしい(青ブタのTVシリーズは2018年放送)。
(2022年制作の『ぼっち・ざ・ろっく!』には現在の姿で登場してた)

 

江の島周辺

 

江の島

言わずと知れた観光名所。TVシリーズ 第6話で咲太と古賀がデートした場所。

対岸からの姿

 

新江ノ島水族館

クラゲ推しの水族館……というか、今では珍しくなくなったクラゲの展示はこの水族館が先駆けだったらしい。
青ブタでは麻衣さんが自らの思春期症候群に気づくきっかけになったり、咲太と古賀がデートをしたりした場所。

巨大な屋根を見上げるアングル

 


 

江の島と水族館を見て回り、追加の予定も終了。
この時点でまだ昼前だけど、帰りの新幹線は夜。時間的には相当余裕があるので、さらに予定を追加することもできなくはなかったけど、体の負担を考えて断念。

藤沢で昼食を食べたあと新横浜駅に向かって、待合室のベンチで軽くうとうとしたり、dアニメストアを観たりして 7時間 暇をつぶした…。

 


戦利品

 

鳩サブレー

鎌倉銘菓……らしい。三大「関西人が『名前は聞いたことあるけど食べたことはない』お菓子」、ナボナ鳩サブレー、あとひとつは?

青ブタでは双葉編で鎌倉まで行った咲太が買ってきたり、「おでかけシスター」で進路相談の際のお茶請けとして出てきたりする。
そしてのどか編では容器の缶がキーアイテムとして登場。

TVシリーズ 第10話より

原作小説だと『三十六枚入り』と書かれてたけど、廃番になっちゃったみたいなので現行のラインナップでそれに近い34枚入り缶を購入。

……あれ?

……でかくね?(買ってから気づく)
作画や演出の都合からか、アニメだと設定が違うみたい……。
ということで、アニメ版と見た目が似たサイズの缶を追加購入。

16枚入り缶

味はあっさりしてて、バターの香ばしい香りが鼻に抜けておいしい。
飽きのこない味……だけど、計50枚。毎日食べてるけど、まだなくならない……。

 

上野動物園の年間パスポート

入園する際には普通の入場券を買って、これは一旦退園してから購入した。できれば無記名で持って帰りたかったけど、購入時に記入しないといけないんだね…。
有効期限中に行くことは多分ないので元は取れないけど……寄付をしたとでも思えばヨシ!

 

パンダのぬいぐるみ

アニメではカットされたけど、原作小説に「上野動物園に行った咲太とかえでがお土産にパンダのぬいぐるみを買って帰る」というエピソードがあったので。
『動物園の二頭にちなんでぬいぐるみも二頭だ。』*6と書かれてるのだけど、これが2体セットでリーズナブルだった。

 


まとめ

歩いた。とにかく歩いた
アプリの記録を見ると 5日間で 12万歩くらい。そんなに体力がある方ではないし疲労も溜まっていたはずだけど、それでも不思議と足は動いた。帰宅後に反動は来たけど……。
完全キャッシュレス
ホテルは Yahoo!トラベルで予約時に決済済みだし、新幹線はスマートEXアプリでチケットレス。移動は全部 Googleウォレットの Suicaで、買い物は iD か QUICPay。唯一物理クレカを使ったのは百貨店で鳩サブレーを買ったときだけ。念のためにいくらか下ろしておいた現金を使うことはなかった。便利な世の中だ…。
モバイルバッテリーはそんなにいらなかった
何個か持ってるのを全部持って行ったけど、使ったのは Ankerの10000mAhのやつ 1個だけ。あと普段使ってるスマホとは別に、前に使ってたのをサブとして持って行った(回線は1GB/月・前月分の繰越があって2GB弱くらい)。メインのバッテリー残量が少なくなったら充電して、その間はサブの方を使い、ホテルではモバイルバッテリー自体も充電する……という運用でなんとかなった。
伊藤園の自販機 多くね……?
藤沢の街を歩いてると、やけに伊藤園の自販機が目についた。確かビックカメラの店内にもあったはず。自分の行動圏内にももちろん存在はするけど、こんなに多くはない気がする……。
気になってググったら『自販機台数を減らす戦略を取っている伊藤園(20万台)は、優良エリアや好採算エリアへの設置に限ることで効率を上げています』と書いてるページを見つけたけど、その影響なんだろうか……?

 


 

『1日目』の冒頭でも書いたけど、行く前は「現地に行くと『自分がアニメの中の世界にいる』みたいな感覚になるのかな…」と思ってたけど、それはあんまりなかった。……現地では。

自分の場合、それとは逆に「行ったあとでアニメを観ると『自分が知ってる場所がアニメの中の世界にある』という感覚になった」

この感覚に気づいたのは2日目の夜に映画館で「おでかけシスター」を観てる時。「あっ、ここ、昨日行って歩いたところだ…! この場所に来るまでの道とか、カメラのフレームの外側に何があるかとか、知ってる!」という、現地に行ったときとは別の興奮があった。

家に帰ってからTVシリーズを観てみると、自分の中にやはりそれまでとは違う感覚があることに気づく。
咲太の家から藤沢駅までの通学路、バイト先のファミレスの位置、七里ヶ浜駅から高校までの距離、高校から海岸までの近さ。そういう地理、距離感、所要時間が、頭ではなく体感として解るようになった。

……『解像度が上がる』ってこういうことか~。やっぱり行ってよかった。
藤沢の街は(アニメで描かれた範囲では)だいたい見て回れたので、次があるなら今回行けなかった場所……鎌倉、鶴岡八幡宮、逗子、森戸海岸、みなとみらい、それに大垣や金沢にも行ってみたいな~。……いつの話になるかわかんないけど。

 

 

*1:こちらのサイトを参考にしました

*2:デニーズは大阪に数店舗だけあるけど…

*3:図書館の公式サイトこちらのツイートを参考にしました

*4:それと、こちらこちらのツイートを参考にしました

*5:シャーロック・ホームズの「ホームズ」は「Holmes」だけど…。

*6:作品の設定年(2014年)、および原作小説刊行時(2015年)にはリーリーとシンシンの2頭しかいなかった

青ブタの原作小説を読んでます

電子書籍で(スマホKindleアプリ)。
現在5巻目(おるすばん妹)まで読了。1ヶ月くらい前に1巻だけ読んだあと、それから放置してたんだけど、2巻に手を着けてからは1日に1巻くらいのペースで読んでる。ライトノベルってあまり読んでこなかったんだけど、とにかく説明過多で読むのにやたら時間がかかるイメージがあった(偏見)。でも、青ブタは文体が小難しくなく、表現が比較的平易でサクサク読める。それと、アニメを先に観てたので情景を容易に想像できるというのも大きいのだろう。

そのアニメとの細かな……だったり、細かじゃなかったりする違いも楽しんでいる。「これは良改変だったな」というのも「これは原作の方が良かったんじゃ…」というのもある(尺の都合で止む無く…というのが大半なんだろうけど)。エピソードの順序がかなり入れ替わってたり、そもそもエピソード自体がバッサリなくなってたり、「え、アニメだと未だに××なのに、原作だとこの時点で〇〇なの…!?」とか。あと映画「おでかけシスター」で何回か咲太の口から出た「豊浜は高学歴アイドルを目指してる」。これもアニメしか観てないと「そんな設定、あったっけ……???」ってなる(なった)けど、原作読んでやっと「あー、これのことかあ」ってなった。

まだ1周目だしきちんと比較したわけじゃないけど、3話分を使ってアニメ化した1、2巻目(バニーガール先輩とプチデビル後輩)よりも、2話分でアニメ化した3、4巻目(ロジカルウィッチとシスコンアイドル)の方が改変の度合いが大きい気がする。

 

それに……読み終えたばかりの5巻(おるすばん妹)。こないだ書いたブログのエントリと(今のところ)いちばん関係が深い巻。あのエントリは、本当にかえで/花楓が好きすぎて勢いで書き上げた部分が大きくて、書いてる最中は「これって結構アリな考察なのでは…!?」なんて思ってたことが、原作だと地の文にあっさり書かれてたり……トホホ。まあでも、アニメ版だけを観て書いたにしてはまあまあのデキだと褒めてやってもいいのではないだろうか(自分に甘い)。

自分でも意外だったのは、『かえで』から『花楓』に戻った日の朝の部分を読んでて、『かえで』がいなくなってしまった喪失感よりも『花楓』が帰ってきてくれた喜びの方を大きく感じたこと。アニメの方を何周もして、(大袈裟じゃなく)毎日『かえで』と『花楓』のことを考えてたから、自分の中で気持ちの整理ができてしまったのだろうか……?(でも、そのあとの翔子さんが日記を読み上げるシーンではやっぱり泣いたけど)

それに例の「目覚めたばかりの『花楓』」も、原作だと全然生意気には感じなくて、「ごく普通のかわいい妹」だと思った。この延長線上にアニメ版「おでかけシスター」の『花楓』が存在するということになんの違和感もない。
…………やっぱり、アニメ版の「生意気な『花楓』」は、やりすぎだったんじゃないかなあ…………。


(2023/08/24 22:45追記)

「ゆめみる少女」と「ハツコイ少女」読了。映画「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」の原作である2冊。

原作とアニメ版を比較すると、物語のスタート地点ではかなりの数のエピソードの順序が入れ替わっているが、それ以降は大筋は変わりない*1。……が、重要シーンと重要シーンの間の会話シーンが結構削られてたりする。まあ、尺の都合で削るならこういうシーンからかな……と納得できなくもないが、あるのとないのとでは作品の印象がかなり違ってくる。珍しく上里と咲太が(比較的)「普通の」会話をしてるシーンとか、「双葉は、咲太のことを友人として本当に心配してるんだな……」というシーンとか。これ以外にも、双葉の登場シーンは相当削られてる。映画の方は「咲太と翔子と、そして麻衣の物語」という色彩が濃くなっているけど、原作だと、それに加えて双葉、古賀、花楓、のどか、咲太の父親、それに国見*2たち「咲太の周囲の人々」の行動や心情も丁寧に描写されてて、それによって「『当たり前の幸せ』のかけがえのなさ」が際立っている。

 

それに咲太と花楓の、ごく普通の兄妹の、なんてことない(でも、大切な)会話。原作を読むと、『かえで』に対する『花楓』の感情というのは、思ってたよりフラットなのかもしれないな……と思った。原作だと花楓が髪を切りに行くことになった経緯も明確に描かれてたり、「ハツコイ少女」の時点(12/29)で、咲太と花楓で動物園に行って、パンダを見て、パンダのぬいぐるみを買って帰ってたり*3するんだな…。まだ「おでかけシスター」は読んでないし、「嫉妬」みたいなものもゼロではないのかもしれないけど……。

あと、どうしても「一人の人間の生死」までどうにかなったのなら、『かえで』もどうにかなったんじゃないのか……という思いが芽生えてきてしまった。アニメだと「咲太が下した決断」からラストシーンまでがわりとさらっと描かれてたせいかそういう考えには至らなかったけど、小説だと結構濃密に描かれてる上に能動的に読み進めないといけないから、その間にいろいろ考えてたせいだろうか……?

 

さあ、次はいよいよ……。


(2023/08/26 13:50追記)

「おでかけシスター」読了。今まででいちばん「原作に忠実なアニメ化」だった(いや、原作小説を読んだ感想が「〜アニメ化だった」というのも変だが)。
例えば、自宅に友部さんと父親が来て花楓の進路相談をするシーンで、花楓の膝の上になすのが飛び乗るところ。これ、なんとなくアニメ版独自の演出なのかと思ってたけど、これも全く原作のままだった。
もちろん細かい差異や改変、カットや簡略化されたシーンはゼロではないけど、基本的にほぼそのままアニメ化されてる。

最も違いが大きいのは映画の(Cパートを除いた)ラストシーンにあたる2月28日。ここで「あの人」が登場するとは思わなかった…。このシーンは、12月公開の「ランドセルガール」に回されるんだろうか?

……あと、(どうでもいいことかもしれないけど)花楓と咲太の服、まさか一緒に洗ってるとは思わなかった……。いや、気にはなってたんだ。「『かえで』は全然気にしないだろうけど、『花楓』は嫌がるんじゃないかな…?」って。原作に明記されてたとは……。

 

 

……で、これほど原作に忠実にアニメ化してるのに、読後・鑑賞後の「『花楓』の、『かえで』に対する感情」についての印象は原作とアニメで全然違っていた(自分だけかもしれないが……)。

アニメだけしか観てない段階だと「『花楓』は『かえで』に対しての嫉妬があって、咲太にもっと『自分』を見てほしいと思っている。峰ヶ原高校を受験するのも、『自分だって頑張れる』ということを咲太に認めてほしいから」だと思っていた(というか、深読みしすぎていたというか……)。

でも原作を読むと「2年間 頑張ってくれた『かえで』にお返しがしたい。そのために、彼女が叶えられなかった夢である峰ヶ原高校に行きたい」という、セリフや地の文で語られていたことを、変に曲解せずにそのまま受け入れたい……という気持ちになった。

 

 

原作と、それを忠実にアニメ化したものとで、何故こんなに印象が違うのだろうか……?と考えると、理由はいくつか思いつく。

 

ひとつは「アニメの力」。
予告編にも使われた、保健室での花楓の慟哭のシーン。花楓はここですすり泣きながら「もうひとりの私ががんばってきてくれた」と、かえでへの感謝を繰り返し述べていた。……が、このシーンの最後で彼女が語ったのは「きっと、前の私の方がよかったんだよ……」「お兄ちゃんだって、もうひとりの私の方がよかったんでしょ……?」という言葉だった。

ただ、このシーンも原作に忠実にアニメ化されており、花楓のセリフ自体は原作もアニメもほぼ変わりない。しかし、アニメ版のこのシーンは気合の入った作画、演出、そして久保ユリカさんの鬼気迫る演技によって、劇中で最も強烈な印象を観客に与えるシーンとなっている。

これらのことが相まって、花楓がこのシーンで最後に語った「お兄ちゃんだって、もうひとりの私の方がよかったんでしょ……?」という言葉を(そんな簡単に言い表せるような単純な感情ではないのに)「嫉妬」なのだと誤解し、そちらが「本音」で、その前に述べていた感謝の言葉は「建前」なのではないのだろうか……と思い込んでしまったのかもしれない。

 

次に、「地の文の力」。
青ブタの原作は、地の文の主語は「僕は〜」ではなく「咲太は〜」だが、実質的に咲太の視点を通した「一人称のような三人称の文体」で書かれている(「三人称一元視点」というらしい)。

この地の文によって「花楓は、2年間 自分の代わりに頑張ってくれたかえでに恩返しがしたいのだ。」…というようなことが、繰り返し何度も語られる。「これはあくまでも咲太の視点であって、花楓が本当にそう思っているのかどうかはわからない」…と疑うこともできるが、そういう邪推をせずに書かれている文章を素直に読んでいく限りは「花楓が、かえでに対してなにかネガティブな感情を抱いている」という印象はまず受けない。

 

そして、単純に「アニメだと削られたシーンが多いから」。
何度も書いている通り、「おでかけシスター」は原作に極めて忠実にアニメ化されているが、『かえで』から『花楓』に戻った「おるすばん妹」の終盤から「ゆめみる少女」「ハツコイ少女」ではかなりのシーンがカット・改変されており、その中には咲太と花楓の会話シーンも相当含まれている。

例えば、TVアニメ最終話に「病室のベッドの上で顔を赤らめながら「かえでの日記帳」を読む花楓。そこに咲太が見舞いに来たことに気づくと慌てて日記帳を隠す」……というシーンがある。エンドロールのバックのシーンで、ED曲が流れているためセリフは無いが、自分はこのシーンで「花楓は、咲太と「自分が『かえで』だった頃のこと」を話すのに、なにか忌避感があるのだろうか…?」と思ってしまった。

だが、原作でこのシーンに相当する場面では、赤面して日記を読むのをやめてしまうところまでは同じだが、その後咲太に「自分が『かえで』だった頃のこと」を訊いている(そして、自分で訊いておきながら悶絶したりしている)。

これ以降も、原作小説では咲太と花楓の「ごく普通の兄妹のありふれた会話」のシーンがいくつもある。これらを読むと、咲太が『かえで』を失ったショックから立ち直り、戻ってきた『花楓』ときちんと向き合って、腫れ物に触るような扱いをせず、2年間のギャップを埋めようと(『かえで』の時と同じように)「お兄ちゃん」として接しているのだということがよく解る。

そして、冬休み中に2人で動物園に行き、花楓は(かえでと同じように)パンダを見て喜び、パンダのぬいぐるみを買って帰っている。『かえで』から『花楓』に戻ってすぐに咲太が言った「退院したら動物園に行こう」という言葉をそのまま受けとめ、変に「言葉の裏」を想像したりはしなかった……ということなのだろう。

一方、アニメでは上記のようなシーンは大幅に削られてしまったため、戻ってきた花楓と咲太との兄妹関係の空気感がイマイチ掴みにくくなってしまった。そのため、花楓の内心を邪推する余地が生まれてしまったのかもしれない。

 

 

……これらの複合要因から、「アニメ版しか観ていない場合」と「原作を読んだ場合」の印象の違いが生まれてしまったのかもしれない。

「前者」の段階で勢いに任せて書き上げてしまった前エントリは、正直いま読むと結構恥ずかしい。
……けど、その時 胸の中にあった感情、衝動は、それはそれで決して嘘ではないので、消したり修正したりはせずに、そのまま置いておきます……。

 

 

さて、次の巻は「ランドセルガール」……なのだが、この巻以降に手を着けるのは12月公開の映画を観てからにしようと思っている。それまではアニメ、原作、コミカライズを繰り返し観たり読んだりして。
……それから……?

 

 

*1:……んだろうな、と思って読んでたら、物語の核心に触れるシーン(保健室のシーン)で、アニメだと一切説明されなかった、ものすごく重要な事実が突然開示されてびっくりした。確かにここを省いても最終的な結末は変わらないけど……。

*2:国見と翔子ちゃんが出会ったという「文化祭のミスコン」のエピソード、これ原作小説(おるすばん妹)でも1行で済まされてるんだけど、どこかで詳しい話が読めるんだろうか……??? / (2023/08/25 9:40追記) 自己解決。2016年にニコニコで「多数決ドラマ」という企画があって、そこで描かれたエピソードだったんだな。

*3:でも、この時の動物園のシーンはわりとさらっと済まされてるのに、特典小説「アニマルランド」で動物園に行った時(3月・春休み)には『かえで』との最後の日に動物園に行った時のことを思い出して感傷的になってたりするのは、ちょっと整合性が取れないような気もする……。

青春ブタ野郎シリーズの『花楓』と『かえで』について

 

6月23日に公開された映画「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」

 

 

 

「アニメ映画が公開されたら、原作とかTVシリーズとか知らなくてもとりあえず行く」というここ数年のルーティーンで観に行ったのだが、自分の人生を変える作品に出会ってしまった。

キャラクターとか、過去のシリーズとのストーリーの繋がりとかほとんどわからないけど、鑑賞後も「とにかくなんだかすごいものを観てしまった」という感触が胸を掴んで放さなかった。

 

気になって過去のシリーズ(TVアニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」と映画1作目の「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」)を観たら、何回も泣いてしまった。

Amazon プライムビデオ: 青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない

Amazon プライムビデオ: 青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない

 

 

今までの人生で、アニメや映画を観て「少しウルッときた」くらいのことはあっても、本当に涙を流したことなんて一度もなかったのに……(それどころか、仕事中にふと思い出して泣いてしまったりもしている)。

 

公開以降、上記の青ブタ過去シリーズと「おでかけシスター」を何周もしている。その度に新たな発見があって、その度に泣いてしまう。

少し前まで考えていたのは、TVシリーズ最後の『花楓』のキャラ付けは、やりすぎだったんではないか…?」ということ。

 

 

『かえで』と『花楓』について(おさらい)

 

青春ブタ野郎シリーズの主人公・梓川あずさがわ咲太さくたには2人の妹がいる。

 

1人は、2年前、彼女が中1、咲太が中3の時まで両親との4人家族で暮らしていた花楓(かえで)

 

 

彼女は同級生からSNSによるいじめを受けて学校に行けなくなり、身体に突然 原因不明の切り傷やアザができるという「思春期症候群」を発症。それだけでは終わらず、ある朝 目覚めるとそれまでの記憶がなくなり、咲太や両親、そして自分自身が誰なのかもわからなくなっていた。

 

このときに生まれたもう1つの人格が『かえで』

 

 

家族や友人のことを何も覚えておらず、性格や口調、歩き方、利き手さえ今までとは変わってしまった『かえで』。そんな状況を父親は受け止めきれず、既に娘のいじめ問題と不登校で疲弊していた母親に至っては、とうとう心を病んで入院してしまった。妻の看病のため、子供たちとは別居することになった父。こうして咲太と『かえで』の二人暮らしが始まった。

 

当初は両親と同じように戸惑っていたが、それまでの『花楓』としてではなく、いま目の前にいる『かえで』をひとりの人間として受け入れ、彼女の「お兄ちゃん」になろうと決めた咲太。

過去の記憶がなく、周りに誰も知っている人がいない。両親だという人物も『花楓』はいつ治るのか、『花楓』の記憶はいつ戻るのか」と、目の前の自分ではなく、『それまでの自分』を見ている。そんな孤立無援の状況で唯一の理解者になってくれた咲太に心を開き、『かえで』もまた、彼の「妹」になろうと懸命に努力する。

 

それから2年。2人の暮らしは平穏に過ぎていったが、その間、『かえで』は家から一歩も外に出ることができなかった。彼女に『花楓』の記憶はなかったが、いじめで受けた心の傷は受け継がれてしまっていたのだ。

 

10月16日。咲太は『かえで』からある決意を告げられる。彼女が毎日 日記をつけているノートに書かれていたのは「かえでの今年の目標」。様々な項目が並んでいる。家から外に出たい、好きなパンダを見るために動物園に行きたい、そして、学校に行きたい。

数ヶ月前、咲太には彼女ができ、たびたび家を訪れるようになった。他にも新たな友人が何人もできて、以前よりいきいきしているように見える。そんな咲太の姿を見て、『かえで』は自分も変わりたい、このままではいけないと思うようになったのだ。

 

 

咲太や彼の友人たちの支えもあって、『かえで』は目標をひとつずつクリアし、ノートに○を付けていく。が、ノートの最後に書かれた目標、「学校へ行く」をクリアするのはとても困難だった。

 

11月26日の朝。咲太と一緒に何度目かのチャレンジをする『かえで』。しかし、通学路で同級生の姿が目に入ると、足がすくんで動かなくなってしまう。

「どうしてダメなんですか……! なんでかえでは学校に行きたいのに、動いてくれないんですか……!」

ボロボロと涙をこぼす『かえで』

 

 

そんな姿を見て、咲太は声をかける。

「わかった。僕がかえでを学校に行けるようにしてやる。だけど練習の再開はちょっと休憩してから。とっておきの場所でな」

そう言って咲太は、どこへ行くかは告げずに『かえで』を連れ出す。駅まで歩き、電車に乗って着いたのは、『かえで』がずっと行きたがっていた動物園だった。好きだったパンダを生で見ることができ、『かえで』は大喜び。この日は一日中 動物を見て回り、気がつくと空はオレンジ色になっていた。閉園間際に咲太が『かえで』に手渡したのは、動物園の年間パスポートだった。

「これがあれば、毎日だってパンダに会えるぞ」
「何度も来て、かえでは元を取りたいと思います!」

 

 

自宅最寄り駅からの帰路、咲太は「近道だ」と言って、普段とは違う道を歩く。そして着いた先は自宅ではなく、夜の中学校だった。校門を乗り越えて中に入り、夜の学校を見て回る2人。

「今日でノートに書いた目標の全部に○が付けられます。……あ、でも、学校はまだ△にしておきます。かえで、明日はお昼の学校に行けるような気がします。明日が楽しみです。明日が待ち遠しいです!」

 

翌、11月27日、朝。

「かえで、朝だぞ。まだ寝てるのか?」
「……う~ん……。おはよ~、お兄ちゃん。……あれ、お兄ちゃんだよね?」
「………ああ」
「あ〜、足がパンパン」
「……昨日、動物園ではしゃいだからな」
「動物園!? 行ってないよ。お兄ちゃんどうしたの?」
「かえで……お前……」
「あれ…? 私の部屋、こんなだっけ…」
「お前……、『花楓』なのか……?」
「当たり前だよ。もう、お兄ちゃん、なに言ってんの?」

この日 目覚めたのは昨日までの『かえで』ではなく、2年前に記憶を失う前の『花楓』だった。

 

長々と書いたけど、この動画の方がわかりやすいかもです…(6分弱)

 

 

この『花楓』が、あの映画と同じ『花楓』…?

 

アニメ版 青ブタで描かれた『花楓』の姿には、大きく分けて5つの段階があると思う。

 

  • 2年前、同級生からいじめに遭って思春期症候群を発症し、記憶を失う前の、『かえで』になる前の『花楓』
  • TVシリーズ最終盤、作中の時間で11月27日以降。『かえで』から元に戻った直後の『花楓』
  • TVシリーズ最終話のエピローグで、退院する際に咲太と会話をしていた『花楓』
  • 前作の映画「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」、作中の時間で12月8日から1月6日。退院後、『かえで』と同じように咲太と暮らし始めた『花楓』
  • 公開中の映画「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」、作中の時間で1月から3月。中学3年生。「進路はどうするのか」という問いに「兄と同じ高校に行きたい」と答え、周囲のサポートを受けながら必死に受験勉強をする『花楓』

 

から『花楓』はどれも同じ人格で記憶も共通しており、『花楓』『かえで』のような別人格ではない。が、比べてみると別のキャラクターと言ってもいいくらいの違いがある。

 

最初に観たのが「おでかけシスター」だった*1ので、自分の『花楓』の第一印象は
ものすごくリアルな今どきの中学生で、健気で、ひたむきで、しっかりしていて、少しはにかみ屋で、本当に魅力的な「理想の妹」という印象だった。

かわいい

 

それから遡ってTVシリーズを観て、『花楓』に戻る前の『かえで』のことを知った。
『花楓』とは打って変わって、無邪気で天真爛漫なお兄ちゃん大好きっ子で「ザ・ラノベの妹」という感じ。
そんな彼女が、傷つきながらも必死に前に進もうとする姿には、本当に何度も泣いた。

かわいい

 

『花楓』TVシリーズ 第1話と第4話の回想シーンの中で登場する。
両シーンを合わせても時間にして数十秒、セリフは第1話では「お兄ちゃん……。」、第4話では「いや……。学校行くの、恥ずかしい……」だけなので、これだけで「記憶を失う前の『花楓』がどんな人物だったのか」を推測するのは難しい。

まだ傷つく前の『花楓』…。

 

そして、問題の『花楓』

 

咲太(と視聴者)が「ノートの目標はほとんど達成した。さあ、今日はいよいよ『かえで』と一緒に昼の学校に挑戦だ…!」と思っているタイミングで戻ってきた…………戻ってきてしまった『花楓』

しかも2年前とは逆に、今度は『かえで』として咲太と過ごした2年間の記憶が失われてしまった。

……が、本人を見ると『花楓』から『かえで』になった時のような混乱した様子はなく、むしろけろっとしている。大事を取って入院すると言われても「私、どこも悪くないと思うんだけどな…」と、不服そうですらある。

 

咲太はともかく、視聴者が知っているのは『かえで』で、『花楓』がどういう子だったかについては、ほとんど何も知らない。

多くの視聴者は「あの天使のような『かえで』がいなくなって戻ってきた、この生意気な女の子が、元の『花楓』……?」と思ったことだろう。

「お兄ちゃん、なに言ってんの?」

 

さらに、TVシリーズの前に「おでかけシスター」を観ていた自分の場合は、それに加えて「え、この『花楓』が、あの⑤の『花楓』と同一人物なのか……???」という混乱もあった。

既に書いたように、自分にとって『花楓』は「理想の妹」とさえ言える存在。こんな妹が欲しいだけの人生だった…。

『かえで』の人格が消えて戻ってきた『花楓』の第一印象は、クs………いや、流石に言葉が強すぎるので自重しておく。……とにかく生意気で、「おでかけシスター」の『花楓』とは似ても似つかない。激しく動揺している咲太や、「記憶が戻った」との連絡に駆けつけて感極まっている父親など意に介さず、けろっとしている。

 

……というようなことに気づいて、記事冒頭の
TVシリーズ最後の『花楓』のキャラ付けは、やりすぎだったんではないか…?」
という疑問が生まれた。

 

身も蓋もないことを言うと、

  • 『かえで』『花楓』のキャラクターのギャップが大きい方が、咲太(と視聴者)の喪失感を演出できる
  • もし2年前と同じように、突然自分が置かれた状況の変化に『花楓』がうろたえていたら、咲太もそれを放っておくわけにはいかず、感情にブレが生じる

……みたいな、作劇上の都合が第一なのだろうと思う。

(実際、かえで / 花楓役の久保ユリカさんは、このシーンで初めて『花楓』を演じた際に、音響監督から「もっと生意気に」と言われていたらしい)

 

さらに、

  • TVシリーズの時点では「おでかけシスター」までアニメ化されるかどうか決まっておらず、そこから逆算して演出・演技のプランを立てることができなかった

……ということもあるのだろうと思う。

 

……でも、そういう「作品世界の外の理由」、いわゆる「大人の事情」で説明して「だからあのときの『花楓』は仕方がなかった」と納得してしまうのではなく、「作品世界の中」から「なぜあのときの『花楓』はあんなに生意気だったのか」という理由を考えてみたら……?

 

 

「目覚めた直後」と「おでかけシスター」のあいだの『花楓』

TVシリーズ最終話のエピローグで描かれた『花楓』
エンドロールの背景では、赤面しながら(おそらく咲太から渡された)「かえでの日記帳」を読んでいた。

エンディング曲の後、いわゆるCパートでは、退院のために荷物をまとめながら咲太と『花楓』が話している。

 

「したいことはある?」
「うーんとね……学校に行きたい。行けるようになりたい」
「もう、怖くないのか?」
「大丈夫だと思う。だって……私は、ひとりじゃないもん」

 

そして2人は病室を出て行き、TVアニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」は幕を閉じる。

「……行くか」「うん!」

 

 

、映画「ゆめみる少女」の『花楓』
89分の上映時間のうち、登場するのは7シーン、時間にして計5分足らず。

『かえで』ではなく『花楓』として改めて出会った、咲太の彼女やその妹とも親しくしている。

映画の中盤では美容院に行き、長かった髪が肩に届かないくらいの長さになった。

そしてエピローグにあたるパート。1月6日の朝には中学校の制服を着て、『かえで』が叶えることができなかった日中の学校に行く練習をしていた。

「……まだすごい緊張するけど、校門まで行けた」

 

 

この③④『花楓』、声の調子などはまだ『花楓』に近いが、話し方はそこまで生意気ではない。むしろ咲太に対する振る舞いなどは『花楓』の方に近いように見える。

 

……やはり、『花楓』だけが異質な存在だったのだろうか?

 

 

TVシリーズ青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」では、各章のヒロインがそれぞれ抱える心の問題が超常現象──思春期症候群を引き起こし、本人、そして周囲に様々な影響を及ぼしていた。
それらを解決するために「原因は何なのか、彼女らは何に悩んでいるのか、どう解決すればいいのか」ということが比較的わかりやすい形で説明されてきた。
中でも『かえで』については、特に丁寧にその心情が語られていたのではないかと思う。

 

一方、記憶が元に戻ったあとの『花楓』については──少なくともTVシリーズの最後から「ゆめみる少女」までは──そうではなかった。咲太と2人で暮らした2年間の記憶がないのに、至って平然としているように見える。
かと思えば、「おでかけシスター」ではそれまでとは打って変わって、突然感情が発露したようにも見える。

 

……だが、本当にそうだったのだろうか?

 

『花楓』の記憶が戻った11月27日、検査のために向かった病院で、咲太と父親に医師がこう告げていた。

 

「記憶を失っていた間のことは、何も覚えていないようですね。今はまだ状況を理解しきれていないようですが、しばらくすると記憶の空白部分に戸惑うようになってくると思います。落ち着くまで入院して、様子を見るのがいいでしょう」

 

『かえで』が消えてしまった喪失感が空気を支配している状況なので見過ごしがちなシーンだが、実際にこの医師が語っていたことが起きていたのだとしたら……?

 

 

もしも『花楓』が、『かえで』とおなじように日記をつけていたら…

11月27日。
朝 目覚めると、身に覚えのない筋肉痛がある。自室も自分が知っているものとは違う。起こしに来てくれた兄の顔もどこか大人びて見える……いや、それ以前に何やら様子が普通ではない。これから一緒に病院に向かうという。……えっ、なんで??

着いた先ではなにやら器具を付けられて検査を受けた。これからしばらく入院させられるという。病室では父が突然泣き出してしまった。この時「トイレに行く」と言って出て行った兄は、結局この日帰って来なかった。

翌日、ふらっと戻って来たかと思えば「退院したらパンダを見に行こう」などと言う。訳がわからない。いいけど、そういうのは妹ではなく彼女を作って……と答えると、「彼女ならいる」という。……えっ、いつの間に…!?

 

入院中に受けた説明によると、私は2年前に記憶を失って、その間、私の身体には別の人格が存在していたらしい。母は心を病んで入院し、父はその看病のため、私や兄とは別居。この2年間、『もうひとりの私』と兄の2人で暮らしていた……と。

確かに、私の身体はずいぶん大きくなっている。12歳・中学1年生だった私は、15歳の中学3年生になっていた。

 

この2年の間、『もうひとりの私』が書いていたという日記帳を兄から渡された。読んでもいいのかな……と少し思いつつ、ページをめくる。……こ、これ、本当に私が書いたの!? この子、どれだけお兄ちゃんのことが好きなのよ…。

 

(『お兄ちゃんの背中に合体』『お兄ちゃんパワーを補給』って……。)

 

……『もうひとりの私』もこの2年間、私と同じように学校には行けず、家の外にも出られなかったらしい。でも日記の最後の方、この1ヶ月くらいは毎日いろんな目標にチャレンジして、すごく頑張ってたみたい。もうすぐ私が…『花楓』が戻ってくることを知ってたのかな…。すごい、外にも出られるようになったし、学校にも行ったんだ。「パンダも見られました」、ずっと「パンダが好き」って書いてたもんね。


……お兄ちゃんが私に言った「退院したらパンダを見に行こう」って、もしかして……。

 

 

『花楓』が戸惑ったであろう様々な変化、2年間のギャップ

 

自身の身体が成長していた

「現在」(作中世界の2014〜2015年)の花楓 / かえでは身長162cmで、同年代の女子の平均よりも大きい方である。成長期なので、2年前から同じだったとは考えにくい。思春期なんて(特に女子は)普通でも自身の身体の変化に戸惑う時期なのに、その変化が2年分いっぺんに訪れたと思うと…。

 

家庭などの環境が一変していた

母は入院、父とは別居、生まれ育った家からは引っ越して、兄と二人暮らし。(2年前の時点で既に不登校だったとはいえ)学校も転校し、幼稚園に通う前からの幼なじみとも離ればなれになってしまった。

『花楓』の幼なじみの鹿野琴美さん(こみちゃん)

 

兄に彼女ができていた

咲太以外の人間との関わりがほとんどなく、極度の人見知りだった『かえで』。咲太が(後に付き合うことになる)桜島麻衣を初めて家に連れてきた際にも、蚊の鳴くような声で挨拶するのが精いっぱいだった。だが、彼女がたびたび家を訪れるようになるとよく懐いて、咲太との交際も普通に受け入れていた。
『かえで』は幼さの残る性格の割に、咲太が初めて自室に招いた麻衣を見て「デリバリーな玄人のお姉さん」と形容したりする耳年増な一面があったり、「17歳と15歳の兄妹でそれはアウトでは…?」というレベルのスキンシップをしたりしてたので、兄の恋愛についてもわりと寛容だったのかもしれない……?)

『かえで』はたびたび兄のベッドに潜り込んだりしていました

 

一方、『花楓』
YouTubeで公開されている「おでかけシスター」の冒頭映像を見ると……

 

 

咲太と麻衣が小指同士を繋ぐ様子を見てなにやら言いたげだったり、「咲太がずっと麻衣にデレデレしてるのが嫌」だったり…。
でもこれは別に「麻衣が嫌い」ということではなく、『花楓』本人も言っている通り、むしろ憧れに近い気持ちすらあるのだろう。
「相手が麻衣だから」…というわけではなく、兄に「いつの間にか」彼女ができていた…ということに対してモヤモヤしているのではないかと思う。

 

別に2人の交際に反対するわけではなくても、『花楓』にとってはある意味 既成事実を突きつけられた形で、

 

「私が知らない2年の間に、お兄ちゃんは成長して、彼女ができていた。
 お兄ちゃんは、私を置いて大人になってしまった……」

 

……みたいな、「嫉妬」と似ているところもあるけどそれとは違う、そんなチクチクした感情が胸の奥に存在しているのではないか。

ちなみに桜島麻衣さんは国民的な知名度がある女優です(なので週刊誌にすっぱ抜かれたりもする)

 

学校、勉強、進路、受験

『花楓』が目覚めたのは中学3年の11月末。
不登校だった『かえで』もある程度の自宅学習はしており、今の『花楓』にその頃の記憶はないが勉強した内容は覚えていた*2

……とはいえ、どちらかというと勉強は苦手で、これから向き合うことになる高校受験には学力が足りていない。……というのは「おでかけシスター」の劇中で描かれた通り。

彼女は2年間休学していたようなものなんだから、たった1ヶ月の勉強で受験に挑戦しなくても「4月からもう一度中学3年生として学校に通いたい」と望めば認められるかもしれない。

だが、もし「そういう選択肢もある」というアドバイスがあったとしても、(少なくともこの時点では)『花楓』は決して選ばなかっただろう……というのも「おでかけシスター」本編を観れば明白である。

 

『もうひとりの私』の存在

そして、おそらく『花楓』が最も戸惑ったのは、『もうひとりの私』──『かえで』の存在だろう。


──ある朝 目覚めると2年間が経過していて、自分にはそのあいだの記憶がない。だが、意識を失って寝たきりだったわけではなく、別の人格として生活していたのだという。
……兄にとって、私がいない2年間を一緒に過ごした『もうひとりの私』は、どんな存在なのだろうか?──

 

もしもあなたが『花楓』と同じ境遇に置かれたとしたら、『もうひとりの私』という存在を、一体どのように受け入れるだろうか……?

 

 

……このように、目覚めてから2ヶ月足らずのあいだに『花楓』はこれだけの変化と向き合わなければならなかった。

目覚めた瞬間の自意識は子供同然の12歳の少女だったのに、彼女は急激に「大人」にならなければならなかったのだ。

 

 

2人の兄妹関係はどのように変わりつつあるのか

「おでかけシスター」の序盤に、咲太と『花楓』の自宅のダイニングでスクールカウンセラーの友部美和子先生、『花楓』、父親、そして咲太も同席して『花楓』の今後の進路について相談するシーンがある。

 

美和子先生に「具体的に行きたい高校はある?」と尋ねられるが、言い淀む『花楓』。
咲太に「言うだけならタダだぞ」と促され、『花楓』は「……お兄ちゃんと同じところ。お兄ちゃんが行ってる高校に行きたい」と答える。
「それならそうと早く言え」と、ちょっと意地悪っぽく笑う咲太。
だが、美和子先生に「今の花楓さんの学力では合格する可能性は限りなくゼロです」と反対されてしまい、ショックを受けひとり自室に帰ってしまう『花楓』。

 

一見 何気ないシーンだが、咲太と『花楓』がかつて(2年前)どのような兄妹関係だったのか、そしてそれが現在どのように変化しつつあるのかをうかがい知る上でとても重要なシーンだと思う。

 

 

まず、咲太。
「もしこの進路相談の場にいたのが『花楓』ではなく『かえで』だったら」と考えてみると……。


『花楓』と同じように『かえで』がなかなか言い出せずにいたら、咲太は恐らく「言うだけならタダだぞ」とは言わず、「嫌なら言わなくてもいいんだぞ」とか「無理して言うことないんだぞ」のような「『かえで』が傷つかないように」ということを第一に考えた発言をしていたのではないだろうか。
そして「お兄ちゃんと同じ高校がいい」の後は「そっか、お兄ちゃんと同じ高校がいいのか」とそのまま繰り返して次の発言を待ったり、『かえで』はどうしてお兄ちゃんと同じ高校がいいんだ?」と理由を聞いたりして、「それならそうと早く言え」とからかうようなことは絶対に言わなかったと思う。
『かえで』に対しての咲太は、基本的に「無理をさせない(ただし『かえで』本人が強く望めばサポートする)」「嫌がることはしない・言わない」「会話は最後まで聞いて一旦すべて受けとめてあげて、茶化したりからかったりしない」という全肯定スタンスだった。

 

また、この「言うだけならタダだぞ」「それならそうと早く言え」を言う相手が「目覚めた直後の、あの生意気な『花楓』」だったら……と考えると、非常にしっくりくる。
やはりあの『花楓』は2年前・12歳の頃の『花楓』だったのだろう。
そして、その当時の咲太と『花楓』は、こうやってお互いに軽口を言い合うようなごく普通の仲の良い兄妹だったのだろうと思う。


……つまり、「なぜあのときの『花楓』はあんなに生意気だったのか」については、

  • 目覚めた直後の『花楓』は2年前・12歳の『花楓』で、咲太のことも15歳の中学3年生だと思っていた。お互いにまだまだ子供だった当時はその兄妹関係も幼さが抜けておらず、あんな生意気な口を利くのも当たり前だった

からだと解釈できるのではないだろうか。

 

 

一方で、『花楓』
なぜ兄と同じ高校に行きたいのか……というのは映画本編を観れば明らかなのでここでは触れないとして、それをなかなか言い出せなかったのは、以前の『花楓』はそんなこと……「兄と同じ高校に行きたい」と言うような性格ではなかったということなのではないだろうか。

さらに、この進路相談の翌日。
それでも『花楓』は咲太に「やっぱりお兄ちゃんが通ってる高校に行きたい」と伝え、その後はにかみながら「お兄ちゃんにお願いがあるんだけど。……勉強、教えてほしい」と頼む。

かわいい

 

「おでかけシスター」の中で何回か見せた、咲太に対してはにかんだような様子は
「私がお兄ちゃんにこんなこと言うなんて、“らしくない” けど…」という照れなのではないだろうか。

 

では、なぜ彼女はそんな “らしくない” 言動をしたのだろうか?

 

 

咲太にとっての『かえで』と『花楓』

『かえで』は、かつて苦しんでいた。
ある日 目覚めると自分が誰かもわからなかった。
そして周りの人たちは、いま目の前にいる自分を無視するかのように、『それまでの自分』に向かって話しかけていた。

 

咲太は、そのことをよく知っている。
彼も当初は両親と同じように、記憶を失い別人のようになってしまった妹を受け入れられずにいたが、いま目の前にいる『かえで』の人格を認めて、彼女の「お兄ちゃん」になろうと決めた。

 

そんな咲太だからこそ、記憶が回復し、帰ってきた『花楓』に対しても同じように寄り添う…………べきだった、と後に彼は思ったかもしれない。

 

から「クラスメイトにいじめられている」と相談を受けたのに守ってやることができず、思春期症候群を発症し、記憶を失ってしまった。当時、15歳の咲太はひどく後悔し、自分の無力さを責めた。
そんな『花楓』が帰ってきたのだから、喜ぶべきことなのは間違いない。

 

だが、2年間を一緒に過ごした『かえで』の存在はあまりにも大きく、その喪失感は彼を激しく苛んだ。

『花楓』の記憶が戻ったことに気付いた朝、咲太は激しく動揺しつつも、父親に連絡して3人で病院に向かう。検査のあと、病室で感極まってしまう父。意に介さず、あっけらかんとしている『花楓』。咲太はそれまで必死に平静を装っていたが、とうとう限界を迎えた。ひとり病院を出て行き、号泣しながら雨空の下をあてもなく走る咲太。

翌日、なんとか落ち着きを取り戻した咲太は再び病室を訪れる。……が、彼は『花楓』「退院したらパンダを見に行こう」と言ってしまう。

 

 

個人的には「気持ちはすごくわかるけど、でも、それは言う相手が違うだろう、咲太…」と思ってしまった…。

 

『花楓』は、この時点では「え…? 急に、なに?」と、唐突な誘いを訝しがるくらいだった。

しかし、咲太から渡された「かえでの日記帳」を読んで、
「自分が記憶を失っていた2年のあいだの『もうひとりの私』は、パンダがすごく好きだった」
「自分が目覚める前日、彼女にとっての最後の日には、兄とパンダを見に行っていた」
*3
ということを知ったとき、『花楓』は一体どう思っただろうか。

 

『かえで』がかつて苦しんだ「目の前にいる私ではなく、『もうひとりの私』を見ている」
これと全く同じではないにしても、それに近い不安を味わったのではないだろうか…?

 

劇中の描写を見る限り、咲太はこの不用意な発言以降は積極的には『かえで』のことは話さず、また、それを察してなのか『花楓』も咲太に対して訊かないようにしていたような気がする。

……が、そんな状況がかえって『花楓』を不安にしていたのではないか……とも思う。
意識的に触れないようにしていても、それでも咲太はふとした瞬間に『花楓』の中に『かえで』の面影を見てしまい、そして『花楓』もそれを敏感に感じ取っている。

 

食事中の『花楓』の姿を見て…

ちなみに『かえで』は右利き、『花楓』食べるときは左手・ペンを持つのは右手

 

 

『花楓』にとっての『もうひとりの私』

 

──私がいなくなっているあいだに、会ったこともない『もうひとりの私』にお兄ちゃんを取られてしまった。
自分が帰ってきたことをお兄ちゃんは喜んでいないのではないか、『もうひとりの私』のままの方が良かったのではないか──。


ここまで明確ではないのかもしれないが、そんな嫉妬にも似た感情が『花楓』の中に存在するであろうことは想像に難くない(というか、「おでかけシスター」劇中でも……)

 

──以前の「生意気な自分」より『もうひとりの私』の方がいいんだったら、私もそんなふうに、自分の気持ちをもっと素直にお兄ちゃんに伝えた方がいいのかな──。

 

「おでかけシスター」の劇中、はにかみながら “らしくない” 言動をしていた彼女の胸中には、こんな思いがあったのかもしれない。

 

また、「ゆめみる少女」の中盤、彼女は美容院に行って、長かった髪を肩までくらいの長さに切っている。……この行動には「髪型を変えることで『もうひとりの私』の面影を払拭して、目の前の自分をもっと見てほしい」という思いの表れ……という一面もあるのかもしれない(もしかすると彼女はそこまでは考えておらず、筆者の穿ち過ぎ、邪推し過ぎなのかもしれないが……)

かわいい

 

では、『花楓』『もうひとりの私』『かえで』に対して抱いているのは、そんなネガティブな感情だけなのか……というと、それは決して違う。

 

上の方で一度引用した、TVシリーズ最終話のラストシーン(Cパート)での咲太と『花楓』の会話を再度引用する。

 

「したいことはある?」
「うーんとね……学校に行きたい。行けるようになりたい」
「もう、怖くないのか?」
「大丈夫だと思う。だって……私は、ひとりじゃないもん」

 

最後の「私は、ひとりじゃないもん」というセリフ。
単純に考えると「(兄である咲太がいるから)ひとりじゃない」と解釈することもできる。
が、このシーンの直前に、咲太から渡された(と思われる)かえでの日記帳を読んでいるシーンがある。

読んでる最中に咲太が見舞いに訪れたのを察知して慌てて日記帳を隠す『花楓』

 

そしてこのCパートの冒頭にも、退院の準備の中でバッグにかえでの日記帳をしまっているカットがある。

 

このことから考えると「(『もうひとりの私』である『かえで』がいるから)ひとりじゃない」と考える方が自然なように思う(あるいは、その両方なのかもしれない)。

 

2年前、記憶を失う直前の『花楓』は既に不登校になっており、いちばん精神的に傷ついていた時期だった。
記憶が戻って目覚めた彼女の精神状態がこの頃のままだったら、まず心の傷を癒やさなければならず、学校に行けるようになるのはずっと先になっていただろう。

『かえで』は2年間、家の外には出られず、自室で本を読み、咲太(と飼い猫の「なすの」)と暮らし、それ以外の人間と関わることはほとんどなかった。
だが、これは無駄な時間などではなく、眠っていた『花楓』の心の傷がこの期間にゆっくりと癒えていったのだろうと思う。

 

 

また、「おでかけシスター」内の会話*4『かえで』だった頃の記憶はなくても、その頃にした勉強の内容は覚えている」と説明された。

 

ここから考えると、『かえで』が必死に頑張って家の外に出て、電車に乗り、動物園に行き、買い物をして、夜の学校にも行けるようになった、彼女の最後の40日間の経験。
これも決して無駄ではなく、『花楓』の中に受け継がれたのではないか。

そして、『かえで』が最後の夜に話していた「明日はお昼の学校に行けるような気がします」という感覚も。
実際には「明日」ではなくもう少し先になったが、『花楓』は「ゆめみる少女」のラスト(1月6日)では校門まで行けるようになり、「おでかけシスター」の冒頭時点(1月16日)では保健室登校ができるようになっていた。

 

記憶を取り戻して目覚めた『花楓』は、自分の心の傷が癒えていること、もう少しで学校に行けそうだという感覚があることに気付く。
そして咲太から渡されたかえでの日記帳を読んで、それが必死に頑張ってくれた『もうひとりの私』のおかげだと理解したのではないだろうか。

 

なにより、『花楓』かえでの日記帳を肌身離さず持ち歩いていた。
高校に入学願書の提出に行った日も、入学試験の当日も……まるでお守りのように。

 

 

……正直、「『花楓』自身も、『もうひとりの私』という存在を自分の中でどう扱っていいのかわからない」というのが本音なのだろうと思う。

「感謝」に近いポジティブな感情、「嫉妬」に近いネガティブな感情、そのどちらもが存在しているのだろうが、それ以前に『花楓』は、『かえで』のことをあまりにも知らない。

 

 

『かえで』の、これから

映画「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」は、『花楓』の自室の勉強机に置かれた「かえでの日記帳」が映されたラストシーンで幕を閉じる。
BGMは穏やかで明るく、部屋は夕日で照らされ、冬から春に移り変わりつつある季節とともに自分の足で歩き始めた『花楓』のこれからを象徴するようなシーンである。

……が、筆者にはこのラストシーンの日記帳が、まるで『かえで』の墓標のように見えてしまって、このシーンを観るたびに、とても悲しい。

 

『かえで』がいなくなって、咲太は憔悴し、立ち直り、しかし忘れることはできず、そして「おでかけシスター」で『花楓』と向き合い……と間接的には『かえで』は物語に影響を及ぼし続けている。しかし、直接的には「『かえで』の物語」は、ある意味 宙ぶらりんな状態になっている。

 

「いなくなってしまった人物」である「『かえで』の物語」は、普通ならこれ以上進行させようがないのかもしれない。

が、「思春期症候群」という超常現象(人から存在を認識されなくなってしまったり、同じ1日を何度もループしたり、1人の人間が2人に分かれてしまったり、姉妹の姿が入れ替わったりしてしまう)が存在する世界なんだから、『かえで』の物語をもっときっちり完結させようと思えばいくらでもやりようはあるように思える。例えば…

  • 咲太にお別れを言うために、最後にもう一度だけ『花楓』と入れ替わる
  • 人格は『花楓』に戻るが『かえで』だった頃の記憶は残り、2人分の記憶が統合される
    • 青ブタの他のエピソードでは、これに近いことは実際に起きている*5
  • 『花楓』の心の中に『かえで』が現れ、2人が対話してお互いを理解し合う
  • なにかのきっかけ(くしゃみをするとかお湯をかぶるとか)で2人の人格が入れ替わるようになってしまう*6

…などなど。

 

これらのような青ブタシリーズ全体の物語に影響を与えるような展開ではなくても、『かえで』は、今でも『花楓』のそばにいて、ずっと見守っている」……みたいな演出があれば、印象はずいぶん違うのかもしれない。

実際、アニメの公式イラスト(キービジュアルなど)ではそういう構図のものも複数存在している。(1)(2)(3)

…が、(現時点では)アニメ本編にはそういうシーンは一切存在せず、これに関しては徹底したリアリズムを貫いている。ある意味 残酷ではあるが、安易に解決させるよりも作品と登場人物に対して誠実だと言えるのかもしれない。

 

『かえで』は物理的・肉体的に死んでしまった訳ではないが、上記のような展開が起きていない「おでかけシスター」時点の状況は、実質的に「死別」と大差がない。

 

『かえで』は日記帳に

かえでがいなくなっても、お兄ちゃんにはかえでのことを、笑いながら思い出してもらえたら嬉しいです。

と書き残していた。

 

『かえで』のことを忘れず、思い出す。

咲太が(そして、我々視聴者が)『かえで』にしてあげられることは、これくらいしかないのかもしれない。

 

 

……なんて、ちょっと悲観的なことを考えたりもしてたのだけど──。

 

 

洗ってないなすののにおいがします

「おでかけシスター」公開1週目の入場者特典「青春ブタ野郎はアニマルランドの夢を見る」

映画の後日談である短編小説だが、『かえで』『花楓』のファンとしては「これを単なる「後日談」にしておくなんてもったいない!」という非常に重要な内容である。
アニメ化して、「おでかけシスター」のエンドロールの後にエピローグとして流すべき……と言っても過言ではない(まあ冷静に考えれば、そんな簡単に実現できることではないのだが…)
少なくとも、(何年先になってもいいので、いつかは)「購入すれば誰でも読める」という形で流通させるべき作品だと思う。

筆者は恥ずかしながら原作小説は未読なのだが*7最新刊までの紹介文を読む限り、この「アニマルランド」が『花楓』『かえで』がメインのエピソードとしては、現時点で(時系列的に)最後のものなのかと思う。

 

入場者特典という性質上、詳しい内容について言及することは避けるが、単純に作品として良いのはもちろん、「「おでかけシスター」までの『花楓』が、『もうひとりの私』である『かえで』のことをどのように思っていたのか」について考える上での[補助線]、そして「今後、咲太と『花楓』の兄妹が、『もうひとりの妹』である『かえで』とどのように付き合っていくのか」という[延長線]を引く上での[起点]としても機能している。

 

このエントリを書いていた数日間、ずっと『かえで』『花楓』のことを考えていて、「「おでかけシスター」で『花楓』は自分の意志で前に進み始めたけど、でも『かえで』は…。」というモヤモヤが常にあった。

だけど、「おでかけシスター」初回鑑賞後に一度は目を通していた「アニマルランド」を数時間前に再読し、「ああ、こんな内容だったのか…!」と理解して、少し救われた気がした。そして、また少し泣きそうになってしまった…。

 

 

さいごに

映画「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」は、冬の張り詰めた、凛とした空気に満ちた静謐な作品である。と同時に、シリーズで最も感情に溢れた作品である。

一見何気ないシーンでも、登場人物の仕草やひとことに注意し、その裏にどんな感情が存在するのかを想像すれば、途端にスクリーンが雄弁に語り始める。

大袈裟かもしれないけど、自分にとって人生を変える作品になった。

 

スタッフ・キャストの皆さん、こんなに素晴らしい作品を世に出してくれてありがとうございます。

前作よりも大幅にクオリティが上がっている作画と美術。

格調が高く、演出と一体になった音楽(中でも咲太たちに支えられながら花楓が猛勉強するシーンの曲は素晴らしい)。

そして、久保ユリカさん。もしも他の方が演じていたら、「おでかけシスター」は(そして青ブタシリーズは)ここまで自分の心に響く作品にはなっていなかったと思います。『花楓』『かえで』を演じてくれて、本当にありがとうございます。

 

思ってた以上に書くのが遅くなってしまって、上映中の劇場でも1日1回とかになってしまったけど……まだ終映にはなってないので、気になった方はぜひ劇場に行って「おでかけシスター」を観てください!!

 

 

*1:本当は4年前に劇場で「ゆめみる少女」を観てたんだけど、細かい内容とかキャラクターとかほぼ覚えてなかったので、実質今回が初めてみたいなものなのです…

*2:現実の解離性同一性障害でもそういうことはあるのだろうか…?

*3:(本記事の流れからは離れてしまうので本文には組み込めなかったため、注釈に留めて置くが……)

11月26日、動物園に行ってパンダを見て、プリンを買って、夜の学校に行った、『かえで』にとっての最後の日。
この日のことまで日記に書かれているということは、彼女が帰宅してからベッドに入るまでの間にそれを書いたということである。

……翌朝 目覚めた『花楓』が「足がパンパン」と筋肉痛を訴えるほど、肉体的な疲労はあったはずなのに。
これが自分に残された最後の時間だということを直感して、力を振り絞って書き上げたのだろうか。
咲太に自分の想いを伝えるために、そして『もうひとりの自分』にバトンを渡すために──。

*4:1月20日、物理実験室での咲太と双葉理央との会話

*5:「ロジカルウィッチ」で双葉理央が2人に分かれてしまった時と、「ゆめみる少女」で未来から遡ってきた咲太が「現在」の咲太の事故を防いだ時

*6:これはちょっと見てみたい。スピンオフで漫画化されたりしないかな…。

*7:既刊は全巻購入したけど、まだ1巻(バニーガール先輩)しか読めてないのです…。